オーウェン、アニー役の演技指導?! ― 映画『クーデター』の魅力②
前回書いたように、オーウェンらしさが凝縮されていると言ってもいい映画『クーデター』。
2回目の今日は、製作にあたってオーウェンが果たした役割について書きましょう。
🔹映画『クーデター』のあらすじと予告編🔹
Photo by Bold Films, imdb
出張のため、アジア某国に家族とともに引っ越してきたジャック(オーウェン・ウィルソン)が暴動に巻き込まれるストーリー。
話は単純なのですが、そこに描かれている愛情と人間模様が観る人を感動させます。
ストーリー・キャスト
予告編
前回の記事
🔹優しく心の強い女性アニーはオーウェンの分身?🔹
Photo by Bold Films, Herald
タイトルで引かなくても大丈夫ですよ。変な内容じゃありませんから。
さて、本作で、最初に配役が決まったのがジャック役のオーウェン。彼の出演は早くも2012年には発表されていました。
脚本と監督を務めたドゥードル兄弟はストーリーを練っている時からオーウェンを念頭に置いていたので、これは当たり前かもしれませんね。
オーウェンに続いて、ピアース・ブロスナンがハモンド役に決定しました。
二転三転したアニー役の女優
キャスティングに難航したのがジャックの妻アニー。
一旦はミシェル・モナハンという女優に決まりかけましたが、撮影の開始が遅れていくうちに、彼女が妊娠してしまい、役を降りることに。
Photo by fandom
その後、ようやく選ばれたのがレイク・ベル。
Photo by glamour
レイク・ベル
ドゥードル兄弟の言葉を借りれば「映画監督や脚本の経験もある多彩な女優」で、本編を見るかぎり、確かにとてもよく似合っています。
・泣きながら、「たとえ明日死んでも、この人生に後悔はない」と、夫に愛を伝えるシーン
・疲れ果てて気力をなくしかける夫を励ますシーン
など、レイクの演技が印象的な場面はいくつもあります。
が、実はアニーのあの毅然とした優しい雰囲気は、レイク自身から出たものではありません。
アニーの表情・仕草の生みの親はオーウェン!
Photo by On this day
「オーウェンはアニーをどう演じるべきか、演技の方向性を教えてくれたの」と、感謝を込めて語るレイク。彼女は女優経験はあったものの、こういった心の強さを必要とする女性は不得手だったよう。
アニーの役を作り上げたのはオーウェンでした。彼は、妻であり母親であるアニーという役をレイクに教え、どういう演技をすべきか、しっかり指導したのです。
そのせいか、映画で見るアニーの性質はレイクより、むしろオーウェンに近く感じられます。というより、アニーとレイクにはまったく共通点がありません。
ジャック(オーウェン・ウィルソン)とアニー(レイク・ベル)はお互いに強い愛情と信頼で結ばれています。そして、よくよく観察すると、同じ精神を共有しています。
夫婦のどちらも、いざとなった時に捨て身の行為ができるのです。もちろん、こうした行動はもともと脚本にあるのでしょうが、そこに真実味を吹き込むのは俳優。
Photo by Bold Films, theworkprint
ジャックはオーウェンそのものと言っていい役柄ですが、役作りを構成するうちに、アニーもまたオーウェンの分身のような存在になっていったようです。
レイクが言うには、「オーウェンには本当にお世話になったわ。私はアクションも慣れてなくて、怖がることも多かったんだけど、その度に彼は冗談を言ってほぐしてくれたり、あるいは一緒に危ない動作をやってくれたりした」。
レイク・ベルのアニーが素晴らしいのも、オーウェンいてこそだったんですね。
ある意味では、『クーデター』のオーウェンは2役していると言っても過言ではないかもしれません!
🔹オーウェンの映画には付き物の危険なアクション!🔹
オーウェンの出演作であっと驚くアクション映画は『エネミー・ライン』ですが、本作も終始アクション続き。
ちょっと目立つシーンを2つ紹介しておきましょう。
ビルの屋上から飛び移る
Photo by Bold Films, vulture
予告編にも出てくる、あのハラハラするシーン。
ここは、4人の俳優にそれぞれピアノ線を結びつけ、本当に跳んでいます! もちろん、着地点にクッションはありましたが、高さはかなりあったので、勇気が必要だったでしょう。
もっとも、次女ビーズを演じたクレア・ギア(⬆の写真の子ども)はこのシーンを楽しみにしていて、メイキングでも「今から飛ぶの、すごく楽しみよ! 嬉しそうな顔をできないから、残念だけど」とワクワクしていましたが・・・。
しかし、オーウェンはワクワクどころではありません。楽しそうなクレア・ギアとは正反対に、「今から落ちると思うと、胃が痛くなるよ」と、疲れ切った表情で話しています。
かわいそうに、ビルのシーンを撮影した時には、オーウェンはすっかりくたびれていて、着地がなかなかうまくできませんでした。そこで、低い台からジャンプして転がることにし、さっきの高いところから跳んだ映像と合わせたそう。
そりゃあ、疲れもしますよね! 自分のアクションと演技をこなすだけでなく、レイク・ベルの仕事まで手伝ったのですから。
梯子を駆け上がり、ガラスを突き破って逃げる
アメリカ人が殺されるのを目撃し、大急ぎでホテルに逃げ込む最初のアクションシーン。
あのガラスはたぶん本物ではないでしょうけど、梯子がグラグラしてるのはかなり心配になりますね。おまけにオーウェンは明らかに疲れ切っているのが分かります。
「コメディでかなり危険な映画もあったから・・・」
Photo by 20th Century Fox, moviestills
インタビュアーから、「いつもコメディを演じているから、アクションものは大変だったでしょう?」と尋ねられたオーウェンは、「それはどうかな。コメディでも相当危ないシーンをやったこともあるから」と、答えています。コメディで危険な作品というのは『シャンハイ・ヌーン』や『トラブル・マリッジ』のことを指しているのでしょう。
しかし、監督のエリック・ドゥードルはこう言っています。「撮影を始めて3週間経った頃には、オーウェンは全身に傷を負い、疲れ切ってフラフラしていた」。
自分では何でもないフリをしているけど、やっぱりオーウェンは無理をして、疲れ切ってしまったんですね。
つづく➡️
owenwilson.hatenablog.com
🔹『クーデター』を視聴する🔹
最近はやりのVOD(ビデオオンデマンド)で扱っているのは1社のみ。無料お試し期間があり、期間内に解約すれば、料金は一切かかりません。
U-NEXT
数あるVODの中では最も有名かもしれません。初回登録後、31日間はどの作品も見放題です。
DVD・ブルーレイ
動画配信サービスは手軽で便利だけど、しっかりと映画を鑑賞するなら、やはりDVDやブルーレイがおすすめ。配信サービスでは見られない特典(未公開シーンやメイキング映像)が盛りだくさんですし、視聴期限がなく自由度が高いのもメリットです。
ただ、この『クーデター』、だんだん希少価値になってきているようで、手に入りにくくなっていますね。
また、DVDはちょっと注意が必要かもしれません。ブルーレイと比べると、本編映像の何ショットかカットされている気がしました。
さらに、この映画の場合、特典はブルーレイにしか収録されていないので、できればブルーレイをおすすめします。