最高にオーウェンらしい映画『クーデター』のジャック
※21年8月の記事をリライトしました。
オーウェンの映画の中でも、最もオーウェンらしい映画といえば、紛れもなく『クーデター』です。原題は《No escape》、逃げ道なしという意味ですね。
公開は2015年。かなり話題になったので、ご覧になった方も多いでしょう。個人的には最も感動した映画の一つです。
オーウェンのおすすめ作品をまとめた記事でも、真っ先に『クーデター』を選出しています。
・オーウェンのおすすめ作品10選
この映画に関してはストーリーが分かりやすいので、作品の解説をする必要はまったくありません。
・映画『クーデター』(2015)の見どころ。
・本作に見るオーウェン・ウィルソンの魅力
・『クーデター』の登場人物とキャスト
とにかく、この映画はオーウェンの魅力が溢れ出る作品です。ぜひ存分にオーウェンらしさを味わってください。
- 🔹『クーデター』の見どころはオーウェン演じるジャック!🔹
- 🔹最もオーウェンらしさが前面に出た映画🔹
- 🔹映画『クーデター』(2015)のあらすじと予告編🔹
- 🔹オーウェンの本質を知るには『クーデター』を観るのが早い!🔹
🔹『クーデター』の見どころはオーウェン演じるジャック!🔹
とにかく、この映画の見どころは、オーウェン演じるジャックに集中しています。『クーデター』のジャックはオーウェン本人にそっくり!
オーウェンならではの、
・優しさ
・勇気
・温かい愛
といった美点が余すところなく発揮されていて、観ているとうっとりしてしまいます…。
1.パニックの時でも、もっと弱い者に気づく
Photo by Bold Films, showbiz
市場でクーデターが起こり、いきなり敵に包囲されてしまったジャック。
訳も分からないまま揉み合う人々の間に放り込まれてしまいますが、隅で震えているアジア人の母娘に目を留め、とっさに自分の身体で守ります。
ホテルに逃げ込んだ時には、暴動に気づかずに集会を開いているアジア人たちに「ホテルが襲われるぞ! 逃げろ!」と、警告することを忘れません。
映画の終盤近くでも、家族と一緒に走って逃げている最中に、ずっと後ろでハモンド(ピアース・ブロスナン)が倒れ込んだことに気づいて駆け戻る場面がありました。
自分が逃げ惑いながらも、合間に他の人も助けようとする。こうした言動は映画中に散りばめられていますが、現実のオーウェンと全く同じです。
2.常に落ち着きを持ち、時には果敢な思いつきを実行する
ジャックは予期できぬピンチに見舞われては、必ず抜け出す方法を思いつきます。例えば、ビルの屋上から飛び移るシーン。
彼は急ぎながらも隣のビルとの距離を目で測り、妻・長女・次女それぞれを、最も効果的な言い方で説得します。
・妻を説得するシーン
まずは妻のアニー(レイク・ベル)。泣かんばかりに怯える彼女を「ここで殺されたいのか? 敵の十歩先を行くんだ! そうすれば逃げるチャンスが増える!」と励まして、何とか跳び移らせます。
次女のビーズ(クレア・ギア)には「犬の名前は何にする?」と聞いて気をそらし、先に移った妻の元に放り投げました。
長女ルーシー(スターリング・ジェリンズ)には一番手こずりますが、危険を防ぐために自分のベルトで娘の腕を縛り、ついに成功させます。
オーウェンでなければ、あの緊迫感と勇気、そして毅然としていながらも温かみのある雰囲気は出せなかったでしょう。彼本人そのままを見ているように錯覚するシーンの一つです。
オーウェンは「(ビルとビルの間が)あれくらい狭い距離であれば、誰でも間違いなく同じことをするよ」と、コメントしていますが、どうでしょうか・・・。怖くてできない人もいるのでは?
3.「(娘のルーシーをプールに)行かせたのか?」
暴徒に追われてやっとホテルの部屋にたどり着いたジャックが、ルーシーの不在に気づいて、アニーを問いただす時の言葉。
この一言に、妻の不注意を咎めるニュアンスがあるのがオーウェンらしいところ。
・ルーシーを助け出すシーン
彼は自分の子を持った経験はないものの、他人の子を養育していますから、こうした子供に対する注意深さには優れているのです。
・オーウェンが見捨てられた甥を育てたエピソード
いいえ、自分の子がいても不注意な親はゴロゴロいますから、養育経験とは関係ないかもしれませんね。
どこであれ、小さな子を勝手に一人で出歩かせない。短い会話ながら、そうしたオーウェンらしい考え方が現れています。
結局、ジャックは今やっと命からがら戻ってきたばかりなのに、娘のルーシーを探しに、またも飛び出して行く羽目になります。
4.他人を守るためなら、潔く死を受け入れる
Photo by Bold Films, thecinemahoric
映画の終盤、ジャックが敵の手に落ちて、殺されそうになるシーン。残酷さを喜ぶ彼らは、何とルーシーに手を下させようとします。
ピストルを持たされ、自身も頭に銃口を突きつけられながら泣いている娘に、ジャックは覚悟を決めて言います、
ジャック:ルーシー、パパを撃つんだ! 勇気を出して、撃つんだ!!
なかなかできることではありませんよね。物語ではしょっちゅうお目にかかりますが、現実ではここまで冷静にはいられない人のほうが多いはず。
でも、オーウェンは現実でも同じことができる人ですから、重要な共通点なのです。こうした捨て身の行為が似ているのは、かなり珍しいのではないでしょうか?
🔹最もオーウェンらしさが前面に出た映画🔹
『クーデター』は、オーウェンらしいオーウェンを味わえる、非常に稀少な映画です。
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
愛する家族を守り、勇気を失わないジャックはまさにオーウェンにぴったり。こういう役こそ似合うのに、コメディ俳優と勘違いされているのは遺憾です。
本作でハモンドを演じたピアース・ブロスナンは、インタビュアーがオーウェンをコメディ俳優扱いするのに呆れていました。
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
ピアース:『エネミー・ライン』を 忘れたのか! オーウェンはどんな役だってできる。とても多才で、観客の目をスクリーンに引きつける人格を持ち合わせているんだから。
まったくピアース・ブロスナン様のおっしゃる通り! オーウェンの出演作品のリストをしっかり見れば、コメディではない映画が多いことにも気づくはずです。
オーウェン・ウィルソンのために書かれた役
ジャックは最初からオーウェンのために書かれた役。この映画の監督と脚本を務めたドゥードル兄弟は脚本を書いている時から、役のイメージにオーウェンが浮かんでいたそうです。
ドゥードル兄弟:もともとコメディのイメージが強いオーウェンを起用することについて、世間がどう思うか不安もあった。でも、僕らは脚本を書いている段階からジャック役にオーウェン以外の俳優は考えられなかったんだ。
脚本・監督を務めたドゥードル兄弟
Photo by ©Jim Smeal/BEI
確かにドゥードル兄弟の言うとおり、ジャックはオーウェンでなければ演じられなかったでしょう。
→インタビューが収められたBlu-ray
オーウェン自身、オファーに大喜びだった!
オーウェンの性格を正しく知っている方は予想がつくと思いますが、彼はこの映画のオファーが来て大喜びでした。
オーウェン:脚本を読んで、すぐに引き込まれた。戦闘機に乗ったり、ただ争ったりするんじゃなくて、家族を守り抜くために戦うのがいいんだ。ジャックの言動は僕と全く同じだから、演じるのがとても楽だったよ。
僕が普段観る映画はドラマやスリラーのほうが多いのに、演じる時に回ってくるのはコメディばかりだったというのは面白いよね。
Photo by AKM Images / GSI Media, gogomagazine
しかし、インタビュアーから「これからは、もっとこうしたシリアスな役を望んでいるか」と聞かれると、「別に僕はジャンルで決めているんじゃないよ。コメディでもシリアスでも、大事なのは内容なんだ」と、答えていました。
いかにもオーウェンらしい答えだと思います。彼は、ストーリーに思いやりや愛が息づいていて、精神的な感動があればジャンルは何でも構わないタイプなのです。
🔹映画『クーデター』(2015)のあらすじと予告編🔹
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
出張のため、アジア某国に家族とともに引っ越してきたジャック(オーウェン・ウィルソン)。しかし、外国人を標的にしたクーデターに巻き込まれてしまい、家族を守りながら必死で生き延びる努力が始まる…。
話は単純なのですが、そこに描かれている愛情と人間模様が観る人を感動させます。
あらすじ
無法状態のクーデターを切り抜けて、生き延びる家族を描いた本作は、意味合いは違うものの、今の世界情勢にぴったりです。もっとも、今回の事件のほうが規模は大きいですが…。
何の事を言っているのか分からない方はこちら⬇をどうぞ。
登場人物とキャスト
画面に出てくる人物の数は多いですが、主な人物は6人。
ジャック(オーウェン・ウィルソン)
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
この映画の主人公。仕事のため、家族を連れてアジアに引っ越してくるが、暴動に巻き込まれ、家族を守りながら必死で逃げ回ることになる。
アニー(レイク・ベル)
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
ジャックの妻で、2人の子どもの母。夫がアジア赴任になったことを不満に思っていてホームシック気味だが、暴動を夫と助け合いながら切り抜ける。
ルーシーとビーズ(スターリング・ジェリンズ、クレア・ギア)
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
ジャックとアニーの子どもたち。ルーシーが姉で、ビーズが妹。暴動の中、両親に守られながら逃げ続ける。
ハモンド(ピアース・ブロスナン)
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
ジャックと家族がアジアに向かう飛行機で出会った男。到着してからも、何かと便宜を図ってくれるが、実はCIA。暴動で死亡する。
ケニー(サハジャック・ブーンタナキット)
Photo by ©The Weinstein Company, Bold Films
アジア人。ケニー・ロジャースのファンで、陽気な運転手。ハモンドと仲がよく、CIA仲間。暴動の際に被弾し、命を落とす。
予告編
🔹オーウェンの本質を知るには『クーデター』を観るのが早い!🔹
オーウェンをコメディ俳優と思っている方には、ぜひ本作を見てほしいですね。『クーデター』のジャック役には、オーウェンらしさのすべてがぎっしりと詰まっています。
・『クーデター』のジャックはオーウェン本人の性格にとても似ている。
・監督のドゥードル兄弟は最初からオーウェンを想定してジャックを創作した。
・オーウェンは『エネミー・ライン』でも大ヒットし、コメディ俳優と呼ぶにはふさわしくない。
ちなみに、オーウェンがこの映画で演じたのはジャックだけではありません。妻アニーの役作りも大半はオーウェンが構成しています。
このことについては、↓こちらの記事で詳しく解説しているので、併せてどうぞ。