オーウェンが端役を演じた『アルマゲドン』。セリフを全部書き出しても、このブログの1記事分にも満たないほど出番の少ない役ですが、オーウェンは「主役を食ってしまう」ほどの存在感を出しています。
「アルマゲドンなんて、もう見飽きるほど観たよ」という方でも、脇役オスカーの細かいところまでご存知の方は少ないのではないでしょうか?
先に言うと、オスカーはオーウェンがほぼ自分で性格を作り上げたキャラクターです。
オリジナル脚本のオスカーと実際のオスカーを比較して、この役柄の魅力をお話ししましょう!

アルマゲドン (字幕版)
なお、キャラクターのセリフは、オリジナル・現行版ともに英語から直接訳しています。字幕とは違いますので、ご了承ください。
🚀オーウェンが演じたオスカーってどんな人?🚀
『アルマゲドン』でオーウェンが演じたのは、小惑星に旅立つことになる採掘員の1人オスカー・チョイ。
地質学に詳しいカウボーイの役ですが、ロケットが小惑星に不時着した時に死亡してしまいます。
Photo by ©Touchstone Pictures
出番は多くありませんが、チラチラと姿を見せては場をパッと明るくする存在。数少ないセリフしかないにも関わらず、オーウェンの個性はしっかりと打ち出されています。
『アルマゲドン』の監督マイケル・ベイは俳優のアドリブを楽しみにしているタイプなので、オーウェンのアドリブも多いです。
オリジナルの脚本と読み比べるとビックリするシーンもありますよ!
勇気がある
ハリー(ブルース・ウィリス)が部下7人に、命懸けで地球を救うことに協力するかどうか問いかけた時、唯一頭をまっすぐに上げて同意したのがオスカー。
オスカー:これは歴史的偉業だよ! まさに英雄じゃないか。もちろん、僕は参加するよ!
こんなに張り切っているのはオスカーだけで、残り6人はどう見てもしぶしぶの雰囲気。
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生きて帰って来れるかどうかも分からない、未知の天体に出発するのですから、不安になるのは当たり前。それだけに、オスカーの明るい勇気はひときわ目立っています。
ただ、元の脚本を見ると、オスカーはここまで勇敢ではなく、セリフはもっとネガティブでした。
オスカー:クソいまいましい歴史のトラブルか! しょうがねえ、行くぜ!
オーウェンは完全にニュアンスを変えたようですね。脚本通りだったら、全員が浮かない顔で引き受けることになって、メリハリがつかないところでした。

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もう1つ、いよいよ小惑星に出発する時も、オスカーひとりだけ落ちついた態度を見せています。
AJ︰オスカー、どんな気分だい?
オスカー:絶好調! ワクワクと怖さが混ざった感じだよ。98%ワクワクで2%が怖さ、の比率。いや、逆かな? 98%が怖くて、ワクワクは2%かも。ごめん、舞い上がっててよく分からない。頭も混乱してきたし・・・。
(シートベルトを締めてくれているNASA職員に)
オスカー:もっとキツく締めてくれないかな? 落っこちるのはイヤだから。特に激しい揺れが予想される間はしっかり体をくくりつけておかないとね。
あっぱれですね! 誰もが怯えている中、1人ジョークを飛ばして場を明るくしています。
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でも、実はこのシーンも脚本とは大きく違います。
オスカー:ねえ、きみも俺と同じくらい怖いかい?
AJ:(オスカーの怯えきった顔を見て)いいや、きみほどはないな。
オスカー:そうか・・・。
全然、違います!! 脚本ではオスカーも怯えていたんですね。オーウェンが、このシーンを明るく混ぜっ返す雰囲気に変えてしまったのはさすが。こうでないとメリハリがつきません。
あら? メリハリのことはさっきも言ったばかりでしたね。
ちなみに、AJ(ベン・アフレック)は『アルマゲドン』主役クラスの採掘員で、ハリー(ブルース・ウィリス)の娘グレース(リヴ・タイラー)の恋人。
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ロケットの不時着でオスカーが息絶えた時、AJは亡骸にすがって泣き叫ぶので、この2人には強い友情が育まれていたようです。
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⬆アップになったオスカーの死に顔。割れたヘルメットの向こうに、血が点々と浮かんだオーウェンの顔が映るシーンは胸が痛みます。

お茶目
厳しい訓練やNASAの威張った態度を目前にしても、オスカーの明るさは決して崩れません。
仲間たちがうんざりした暗い顔をしていても、彼はひとり生き生きと務めを果たしていきます。
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宇宙飛行の訓練にあたって、身体検査を受けることになった採掘員たち。
血液からドラッグが検出されたり、コレステロールが高すぎたり、次々と問題が発覚する中、オスカーはまったく問題なし。
オスカー:ううっ! これ、壊れてるぞ。ちゃんと検査しろってば! ドカーン!
彼はお茶目なことを言いながら、誰に指示されることもなく、積極的に検査を進めていきます。
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心理テストでは、質問(前後の様子からみて、おそらく「気分はどうか?」といった問いかけに思えます)に対し、思いっきりふざけた答えを返しています。
オスカー:イライラ気味だよ。だってさ、ジェスロ・タルをバンドの1人の名前と勘違いしている人が多すぎるんだ。
ジェスロ・タルというのは、1960年代に発足したロック・バンド。バンドの名前であって、個人の名前ではありません。
オスカーの言うとおり、大半は個人名と間違える人が多いとか。
無理もないですよね、どう見てフルネームの名前に思えますもの。私だってチンプンカンプンです。
・ロックバンド『ジェスロ・タル』
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よりによって、心理テストでこの話題を持ち出すとは、オスカーはまったくユーモラスですね。
案の定、検査官はポカンとして「ジェスロ・タルとは誰かね?」と聞き返しています。やっぱり個人名と勘違いしたよう…。
オスカーの思うつぼでした。
さりげなく優しさを示す
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ピリピリした空気をほぐそうと仲間を思いやるのもオスカー。
オスカー:もし誰か別の人物になるとしたら、誰になる?
AJ:さあな・・・そんなこと考えてもないよ。おまえ、何になりたいんだ?
オスカー:ハン・ソロ。
AJ︰そりゃ困る。誰かになれってんなら、俺がハン・ソロさ。おまえはチューバッカになれよ。
オスカー:僕がチューイ?! ちょっと、きみ! ちゃんと『スター・ウォーズ』観た?
私は『スター・ウォーズ』は観たことがない(オスカーに文句を言われそう!)ので、ちょっと調べてみました。
・『スター・ウォーズ』のハン・ソロ(上)とチューバッカ(下)
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ハン・ソロは密輸業の汚い世界から足を洗って悪の組織と戦い、最後にはヒロインのレイア姫と結ばれます。
一方、チューバッカはウーキー族の半獣で、ハン・ソロの無二の親友。
見ての通りチューバッカはほとんど動物的なうえに、身長は230㎝もある巨大なキャラクターです。
「おまえはチューバッカになれよ」と言われて、小柄なオスカーが呆れる理由は言わずもがなですね。
いずれにしても、周りが不安に怯えている時に、さりげなく希望が持てる映画の話を持ち出すって、オスカーは優しい性格です。
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仲間の恐怖を和らげようとするシーンはもう1つあります。
矢継ぎ早にきびしい訓練を施され、NASA職員を恐怖のまなざしで見つめる採掘員たち。
しかし、若い女性職員がテキパキと難しい話をしている時、オスカーは実に人間的な反応を示してみせます。
オスカー:(そばにいる採掘員にささやく)困ったな。彼女を好きになりそう。これって僕だけ?
ごく日常的な恋愛感情の話をすることで、NASA職員も同じ人間にすぎないことをほのめかしたわけです。
ちなみに、この2つのシーンはオリジナル脚本には存在しません。

几帳面な働き者
屈託のない明るいジョークで場を和ませるオスカーですが、実はグループの中で1番まじめな働き者でもあります。
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例えば、地球から小惑星まで向かう時の注意点について説明を受けている時、熱心にメモをとっているのはオスカーだけ。
バカな話で盛り上がってしまう仲間たちの中で、ただ1人まともな質問をする人物でもあります。
オスカー:分かりました、トルーマンさん。じゃあ、無事に小惑星に着陸できたら、そこでは何に気をつけたらいいの?
トルーマン:日光の下では200℃に上がり、日陰ではマイナス200℃まで下がる。あちこちにカミソリのよう鋭い峡谷があり、重力は安定せず、いつどこで噴火が起きるかわからない。そんなところだ。
オスカー:了解! 想像を超えた恐ろしい場所、ということだね。ありがとう。
ここは、珍しくオーウェンがオリジナル脚本をほとんど変更しないまま演じたシーン。
ただし、オリジナルではただの好奇心の雰囲気しかないのに対し、オーウェンはわずかにニュアンスを変えて、職務に熱心な様子を出しています。
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計画的なオスカーは、通信室のモニターやサウンドの仕組みまでしっかりとチェックします。
小惑星の気候風土を尋ねるシーンと同じく、ここも脚本にはあったものの、オーウェンの演技で雰囲気がガラリと変わった場面。
オリジナルでは、オスカーは人目を忍んで通信室に忍び込み、モニターで遊びます。が、オーウェンはあくまでも職務上の研究といった様子で演じました。
欲がない
いちおうオスカーは、他の採掘員と同じくならず者。
ただ、例によってオーウェンが演じたせい(おかげ?)で無法者のイメージは99%取り去られています。
1%だけ出てくるのは、駐車違反の罰金を溜めていること。
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人類を救う見返りとして、採掘員たちがNASAにいろいろな要求をする時、オスカーはこの未払いの切符を無効にすることを求めます。
オスカー:7つの州で56件あるんだ。
オスカーの駐車違反はオリジナルの脚本通りですが、1つ大きく違うのは、
103件→56件
に減っていること。
103件ではさすがに多すぎると、オーウェンは思ったのでしょうね。
しかし、駐車違反の是非はともかく、オスカーは1番要求が少ないですね。
他の採掘員は、
「高級ホテルに1週間泊まりたい」
「以前失くした8ミリテープを見つけ出してほしい」
「ホワイトハウスに滞在させてほしい」
など、金銭・労力を伴う要望をしているのに、オスカーは駐車違反の切符を無効にしてもらえばそれでいいのです。
かわいそうに、オスカーは生きて地球に戻ることはできなかったけど、もし生還していたら、NASAがいちばん楽に要求を叶えることができるのは彼だったでしょうね。
🚀オスカーが生きていれば、死者が減った可能性もある?🚀
誰よりも人類を救う使命に燃え、職務にも熱心で、仲間を励ますこともできたオスカー。
彼が小惑星での任務に加わることができていたら、トラブルも少なく、死者が減ったのではないか・・・と思うのは私だけかしら?
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訓練中、キチンと任務内容を整理していたのはオスカーだけ。たぶん彼は、小惑星で想定されるトラブルを踏まえて、いろいろ準備していたでしょう。
もしオスカーが、「あの惑星は気温差が極度に激しいから、起爆装置が効かなくなるかもしれない」と考えて、予備のリモコンを用意し、誰にもそのことを言わないまま死んでしまっていたとしたら?
オスカーの性格ならこのくらいの予防策は取りそうですが、もしそうならハリーが自爆する必要はなかったのです。
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まあ、私の勝手な想像は脇に置いておくにしても、オスカーがこの映画に躍動感を与えているのは確か。
次に皆さんが『アルマゲドン』をご覧になる時は、ぜひ金髪の若いカウボーイにも注意を向けてみてください。
🚀映画『アルマゲドン』あらすじと予告編🚀
オーウェンの若い頃の作品としては最も有名な映画かもしれません。
ストーリーは、小惑星の衝突が人類の存続を脅かし、特別に派遣された石油採掘員たちが小惑星を爆破するべく、宇宙に旅立つ様子を描くもの。
1998年公開で、ちょうど地球の滅亡が囁かれていた頃に作られました。
あらすじ
予告編
ひとこと感想
正直に言うと、個人的には『アルマゲドン』はあまり好きではないんですよね・・・(好きな方、ごめんなさい!)。
前半は面白いんです。ブルース・ウィリス演じるハリーの辛辣な発言がユーモラスだったり、採掘員が慣れない宇宙訓練に戸惑ったり、とても楽しく視聴できます。
問題は、小惑星に着いてからラストまでの1時間。ひたすら悲鳴とアクシデントの連続で、画面も激しく揺れ、観るのが疲れてしまいます。
ハリーが娘の恋人AJ(ベン・アフレック)を守るために自己犠牲になるラストは感動的な設定ですが、それさえも埋もれてしまうほど緊迫感に慣れてしまう展開・・・。
トラブルはほとんど機械の不調が原因で起こるものばかりで、「あんなにアクシデントばかりでは、月にも行けないのでは?」とツッコミたくなります。
まあ、個人の感想なので気を悪くしないでくださいね。