『ミッドナイト・イン・パリ』は実は駄作?オーウェンの個性を消した珍映画
オーウェンの出演作としてよく知られている映画の1つに『ミッドナイト・イン・パリ』があります。
しかし、私自身はあいにくこれを【駄作】と思っています。ファンの方、ごめんなさい!
Photo by ©︎Sony Pictures Classics.Inc
・公開:2011年
・ジャンル:コメディ、ファンタジー、ロマンス
・時間:93分
・出演:オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール、レア・セドゥー他
はっきり言って、本作が面白くないのは監督のウディ・アレンのせいですね。オーウェンを主役に迎えているにも関わらず、彼の才能をまったく活かせずに終わってしまっています。
これなら一般的に酷評されている『ビッグ・バウンス』のほうが遥かに面白いし、内容もちゃんとしています。
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そういえば、リーアム・ニーソンもアレン監督の『妻たち、夫たち』に出演した時はまったく個性を発揮できていなかったのを思い出します。
アレンの場合、アレンの個性が真っ先に打ち出され、演じる俳優は型にはめられてしまうようです。
🌃『ミッドナイト・イン・パリ』はとにかく退屈!🌃
Photo by ©︎Sony Pictures Classics.Inc
最初にも書いたように、この映画の感想はとにかく「面白くない」の一語につきます。しかしブログに取り上げておいて、この一語に終わらせるのもどうかと思うので、理由を書きましょう。
面白くない理由①︰ストーリーが半端
まず、ストーリーが下書き段階としか思えない酷さです。
真夜中のパリでタイムスリップする発想はなかなか面白いですが、その先に進まない。タイムスリップしただけで、そこではパーティーに参加するだけです。
主人公のギル(オーウェン・ウィルソン)は「過去に夢を持つのは意味がない」と悟って終わりますが、この結論に至るまでの伏線がまったくないので、無理やりこじつけた感じが拭えません。
面白くない理由②︰作品がオーウェンの個性を消している
オーウェンは自分で物語を作り、アドリブの才能にも恵まれた俳優。彼の映画で素晴らしい作品が多いのは、いつもオーウェンが自分のアイディアを盛り込み、時には脚本に大幅に手を入れて作り込むおかげです。
オーウェンのアイディアのおかげで、低俗な映画が感動的なストーリーに変貌した代表が『ウェディング・クラッシャーズ』。
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ところが、この『ミッドナイト・イン・パリ』では、オーウェンは「ウディ・アレンの駒の1つでしかない」のです。アレンが考え、書いたものをオーウェンはそのままなぞるだけ。
これではオーウェンが輝けるわけがありません。『ミッドナイト・イン・パリ』もオーウェンが手を加えていれば、もっと生き生きしたでしょうに・・・。
ついでに言うと、パリという街の雰囲気もオーウェンとはミスマッチな感じがしました。パリのあの退廃的なムードは、生命力溢れる溌剌としたオーウェンとは不協和音を奏でています。
🌃ギルという役柄がオーウェンにミスマッチ🌃
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オーウェンの個性が活かせていないだけでなく、この役はあまりにもオーウェンと性格が噛み合わないのが本作の最大の欠点。
とにかく終始オーウェンが窮屈そうに見えてしまいます。
ウディ・アレンのピント外れ
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もともとアレンは主人公にオーウェンを想定していませんでした。周囲が勧めても、アレンは首を振りました。
オーウェンのことをコメディ映画で観て「陽気なミーハー兄ちゃん」と決めつけたからです。
ウェス・アンダーソンが聞いたら怒りそうな発言ですね。わたしも憤慨しましたが。
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しかし、結局「ぴったりの俳優が見つからなかった」という理由でオーウェンにオファーをかけます。
アレン:いざ会ってみるとオーウェンは真面目な人で、ミーハーじゃなかったよ。
オーウェンに対するイメージを改めたのはよかったものの、アレンはさらにとんでもないミスを犯してくれました。
事もあろうに、アレンはオーウェンが演じた役柄の初期設定だけに目を留めたので、めちゃくちゃになってしまったのです。
どういうことかと言うと、『シャンハイ』シリーズや『ウェディング・クラッシャーズ』を思い出してみてください。
ロイもジョンも脚本の設定通りなら、社会の常識に収まりきれない遊び人のアウトサイダー。しかし、オーウェンは独自の解釈と演技でイメージを変えることに成功しています。
しかし、アレンはプレイボーイや泥棒などの役柄の設定だけに着目したらしく、本作ではギルが婚約者のピアスを盗むシーンを入れ、ここだけ妙に浮いた場面になってしまっています。
オーウェンは共和党、ギルは民主党
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オーウェンは政治的な発言はほとんどしませんが、思想は保守的で基本的には共和党を支持しているようです。
2005年には青年共和党に入り、2016年の大統領選挙では、オーウェンはドナルド・トランプを熱烈に支持しました。
ところが、『ミッドナイト・イン・パリ』のギルは根っからの左派で共和党の悪口まで言います。
政治思想が真反対の役を演じるのは、オーウェンにとってやりにくかったでしょう。
フラフラした性格のギルと一本筋を通すオーウェンの対立
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政治思想だけでなく、ギルとオーウェンは性格そのものがチグハグです。
オーウェンがチグハグな役を演じることそのものは、別に珍しくも何ともありません。『ウェディング・クラッシャーズ』も『シャンハイ』シリーズも『トラブル・マリッジ』も、彼が演じた役は脚本上ではひどい性格の男ばかりでした。
しかし、これらの映画では必ずオーウェンが手を加え、好感の持てる人柄へ昇華させています。
一方『ミッドナイト・イン・パリ』は何度も言うように、オーウェンの個性が入り込む余地がなさすぎるのです。
ギルは恋しているかどうかも分からない女性と婚約し、タイムスリップすればその時代の女性とデート。最後には両方とも放り出して雑貨店の女店員と付き合いだします。
言動は行き当たりばったりで、発言は軽率。おまけに社会主義者。
もしギルが実在の人物なら、オーウェンとはどうしてもウマが合わないでしょう。こんな役をオーウェンがそのまま演じる羽目になったのですから、観ている側は(特にオーウェンをよく知る観客は)ずっと違和感が拭えません。
🌃結論:『ミッドナイト・イン・パリ』はオーウェンファンにはおすすめできない🌃
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一般的には評価の高い映画をコテンパンに貶したので、憤慨なさった方もいるかもしれません。
『ミッドナイト・イン・パリ』は確かにアカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされ、いくつかは受賞もしています。
オーウェンもゴールデングローブ賞にノミネートされ、彼の数少ない賞歴の1つになりました。
とはいえ、もっと演技力のない俳優がいくらでも受賞しているというのに、オーウェンがまったく受賞歴がないのも不思議ですが…。
しかも俳優としてノミネートされたのは、いちばんオーウェンらしくない本作なのもびっくり!
とにかく、『ミッドナイト・イン・パリ』は作品とオーウェンの気質があまりにミスマッチなので、オーウェンファンにはおすすめできません。
そう言う私は本作をちゃんとDVDで持っていますが…。似合わないとはいえ、やっぱりオーウェン本人はとても素敵ですから。