あの生き埋めシーンは本当にオーウェンが演じた?! ― 映画『シャンハイ・ヌーン』解説①
メイキングや音声解説を観ていると、「映画の撮影でそこまでする?!」と、びっくりするような撮影エピソードが出てくる時がありますよね?
危険なスタントシーンを自分で演じてしまうといえば、トム・クルーズとかジャッキー・チェンが有名です。
ここで取り上げるのは、ジャッキー・チェン主演の映画『シャンハイ・ヌーン』。
しかし、この映画で非人間的なアクションを強いられたのはジャッキーではなく、相棒役を演じたオーウェン・ウィルソンでした。
Photo by ©Touchstone Pictures
公開:2000年
監督:トム・デイ
出演(カッコ内役名):ジャッキー・チェン(チョン)、オーウェン・ウィルソン(ロイ)、ルーシー・リュー(ぺぺ姫)、他
あらすじ:紫禁城からぺぺ姫が攫われた! 近衛兵チョンは仲間と一緒に姫を救出するためアメリカへ。そこでチョンは、強盗団の首領のはずなのに、どこか紳士的な男ロイと出会う。
オーウェンの出演作としては『ナイト・ミュージアム』や『アルマゲドン』と並んで知名度が高い作品。
ジャッキー・チェンとオーウェンが初めて共演した映画でもあります。
・予告編
この2人の共演は本作と続編の『シャンハイ・ナイト』のみですが、ジャッキーはオーウェンと相性の良いコンビ相手の1人だと思います。
ひょんなことからアメリカ西部に渡ることになった、ちょっとドジな中国人チョン(ジャッキー・チェン)と素性のはっきりしない盗賊ロイ(オーウェン・ウィルソン)のユーモラスな掛け合いが楽しい映画です。
例によってオーウェンはプレイボーイの役回りですが、少しも女たらしに見えないところは彼らしいですね。
しかし、この映画でオーウェンが味わった苦痛は並々ならぬものでした。
☑ 生き埋めシーンでオーウェンは実際に埋められた
☑ カウンターから投げ落とされるシーンもスタントなし!
☑ ナイフがオーウェンの頭に刺さりそうになるハプニング
『シャンハイ・ヌーン』は、オーウェン出演作の中でも特に危険度の高い映画のひとつ。
撮影中の危険でいえば、オーウェンはジャッキーの何倍も苦痛を味わっています。
残念ながら、『シャンハイ・ヌーン』は現在AmazonプライムやU-NEXTでは配信していないので、TSUTAYAの宅配レンタルで借りるのがオススメです。
🌵オーウェンにとって非常に危険だった『シャンハイ・ヌーン』の撮影現場🌵
Photo by ©Touchstone Pictures
さっきも書きましたが、とにかく過酷です! 下手するとオーウェンは失明していたかもしれないし、最悪の場合、死んでいたかもしれません。
大げさでも何でもなく、この映画を無事に切り抜けて俳優活動を続けられたのは奇跡と言っていいくらいです。
1.炎天下の砂漠で苦痛な生き埋め!
Photo by ©Touchstone Pictures
「首が切れてる?!」 いえいえ、切れてはいませんよ。逆に切れていたら、ニセモノですからオーウェンに負担はかかりません。
オーウェンは砂漠に埋められているんです!!
これはロイが仲間だった盗賊から砂漠に埋められてしまったシーン。監督はこの時、オーウェンを樽の中に入れ、カナダの砂漠に首まで埋めて撮影しました。
そばのハゲタカも見落とさないでくださいね。このタカも本物で、実際にオーウェンの頭をつついていました。
監督:オーウェンの髪にハンバーグの欠片とか骨を混ぜ込んで、ハゲタカがつつくようにしたんだよ。
冗談じゃありません! オーウェンは埋められて手が使えないのに、万一目を攻撃されでもしたら、どう責任を取るつもりだったんでしょうか?
オーウェンはこの撮影を振り返って、こう語っています。
オーウェン:炎天下でどうしようもなく暑かったし、蚊が多くて、大群が目の前で渦巻くのが、はっきり見えたくらい。ハゲタカに突かれるのもちょっと怖かった。でも、ジャッキーとのやりとりは楽しかったよ。
そりゃあ、怖かったでしょう! 状況から言えば、これでも控えめすぎるコメントだと思います。
実際に映画を見てください。このシーンの間、オーウェンの顔は暑さに真っ赤になり、頬に流れた汗も乾いて、辛そうに息をしながら、話すたびに口から砂が流れ出ています。
かわいそうで、観ていられません。
しかも! このシーンはたった数分なのに、撮影には何時間もかかりました! もちろん、その間オーウェンはずっと埋められたまま。
「テイクの間は蚊よけの網をオーウェンに被せておいたがね」などと監督はうそぶきますが、蚊よけの問題じゃありません!!!
本当にもう、俳優の身にもなってくださいよね、トム・デイ監督! まったく気が知れません。これはもう虐待!!
2.酒場のカウンターから落下
Photo by Touchstone Pictures,
次の過酷な撮影は、酒場の乱闘シーン。チョンがたまたま立ち寄ったバーで、砂漠を脱出したロイにばったり出会って喧嘩になる場面です。
ジャッキーが手慣れたカンフー・アクションで観客の目を奪うのですが、ここでも実際にひどい目にあったのはオーウェン。
騒ぎのなか、ロイはグラスやワインボトルの並んだカウンターを超特急で引きずられ、頭から破片もろとも床に落下しますが、これが呆れたことにスタントなし!
「腕にロープをつけられて、ものすごい速さで引きずられるから恐怖だったよ」と、オーウェンはコメントしていますが、またまたおとなしすぎる意見ですね・・・。
監督︰「破片はもちろんガラスじゃない。プラスチックだよ。」
何でしょうか、この言い草は?! じゃ、プラスチックだったら怪我はしないとでも言うんですか? 破片が目に刺さったら、失明するかもしれないんですよ!
カウンターから落下するだけでも危ないのに、破片などもってのほかです!!!
3.ナイフのアクシデントと絞首台
Photo by Touchstone Pictures
これはかなり不気味なアクシデント。オーウェンとジャッキーが後ろ手に縛られ、頭から麻袋を被せられているシーンで、何と、いきなりナイフが飛んできて、オーウェンの頭に刺さりそうになったのです!!!
映画をご覧になってない方から「刃物を投げるシーンだったの?」と聞かれそうですが、違うんです。悪役の中国人はナイフでチョンの弁髪を切り落としはするものの、投げはしません。
オーウェン:袋を被せられていたから、どうして飛んできたのか分からなかったんだ。たぶん、誰かが間違えたんだろうけど・・・。
オーウェンは不安そうに監督に訴えていました。しかし、なぜか監督は話をそらしてばかり・・・。
何とも気持ちの悪いアクシデントです。奇妙なのは、
脚本にないにも関わらず、ナイフが飛んできて、オーウェンの頭に刺さりそうになったこと
話を聞いても、監督が完全無視すること
どういうことでしょうか、これは? オーウェンはかなり気にしていました。
誰かが殺意を持って投げたのでしょうか? あり得ることです。クルーたちが危険物で遊ぶなどとは考えにくいですから。
ちょっと脱線しますが、オーウェンは小さい頃からひどいイジメを受け、命を狙われたことも何度もあります。自殺と報道された2007年の事件も、実は他殺だったことが最近分かりました。
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話を戻すと、デイ監督も何を考えているんでしょうか? ナイフが飛んでくるようなアクシデントを野放しにすべきではありません!
Photo by Touchstone Pictures
つづく絞首刑未遂も大変リスクの大きいシーン。公平を期するために言うなら、さすがのデイ監督もここはかなり神経を使ったようです。
監督:本当にドキドキしたね。「どうぞ誰も怪我しませんように!」と祈る思いだった。
オーウェンはここでも本当に首を吊られ、その後落下するアクションをこなしています。
🌵オーウェンが耐えた危険なシーンまとめ🌵
Photo by ©Touchstone Pictures
この映画でのオーウェンはまるで人形扱い。埋めたり、投げたり、落としたり、物のように乱暴な扱いを受けています。
そもそも、このトム・デイという監督、元々は代役でメガホンを取ったんですよ。したい放題し過ぎじゃありません? 人を危険な目に遭わせて面白がっている節さえあります。
ジャッキーでさえ、山の頂上に登ったシーンで危険な目に遭いました。
事前に監督から危険を教えてもらっていなかったために、あわや地面のない雪だけの部分に歩いて行きそうになったのです。撮影クルーが仰天して戻るように合図を送ったので、危機一髪で免れたのですが・・・。
この話を聞くと、オーウェンは腹を立てて、「監督って、平気で僕たちの身を危険に晒すんだから!」と文句を言っていました。
☑ 生き埋めシーンでオーウェンは実際に埋められた
☑ カウンターから投げ落とされるシーンもスタントなし!
☑ ナイフがオーウェンの頭に刺さりそうになるハプニング
☑ 絞首台からの落下
オーウェンはしかし、本当に我慢強い俳優ですね。普通、こんな扱いを受けたら、文句を言ったりギャラの跳ね上げを要求したりしそうなものなのに、おとなしく我慢して演じています。
もっとも、『シャンハイ・ヌーン』撮影中オーウェンがどうしても嫌がったシーンは1つだけありました。このトラブルについては↓こちらの記事でまとめています。
『シャンハイ・ヌーン』を観る時は、ジャッキーの華麗なアクションを楽しみつつ、オーウェンが多大な犠牲を払ったシーンにも目を向けてみてください。
残念ながら、現在『シャンハイ・ヌーン』はAmazonプライム・U-NEXTどちらも配信していません。
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