サシャと戦うシーンは肩を脱臼したまま演じた! ― 映画『エネミー・ライン』解説④
『エネミー・ライン』第4弾。この映画は次々と驚きのエピソードが飛び出しますが、最終回の今日も、かなり仰天するものがありますよ。
☑ 他の映画からのパロディ
☑ オーウェンの演技力を実感できるシーン
☑ オーウェンの大怪我を負ったままアクション
この記事で言いたいことを先に書いておくと、オーウェンは最後のシーンを「右の肩が外れたまま」演じています!
- 🌲『エネミー・ライン』のあらすじと予告編🌲
- 🌲「ウィルソン〜!」は『キャストアウェイ』のパロディ🌲
- 🌲オーウェンは目の前に何もなくても、真に迫った演技ができる🌲
- 🌲アクシデントに見舞われながらアクション!🌲
- 🌲『エネミー・ライン』を視聴する🌲
🌲『エネミー・ライン』のあらすじと予告編🌲
Photo by hanbunorita
偵察中に敵地に墜落した海軍兵士が命からがら逃げ伸び、ひそかに蔓延る悪を撲滅させるストーリー。
あらすじ
予告編
これまでの記事
1️⃣
2️⃣
3️⃣
🌲「ウィルソン〜!」は『キャストアウェイ』のパロディ🌲
冒頭、バーネット大尉(オーウェン・ウィルソン)はパイロットのスタックハウス(ガブリエル・マクト)を誘い、「風の強さを試してみようよ」と、フットボールのボールで遊びます。
撮影に協力した海軍本部は、このシーンに眉をひそめたようですが、製作側は「少しは明るい場面も必要」と、押し通しました。
オーウェンのアドリブが大ウケする
Photo by 20th Century Fox, fanpop
ボールが海に落ちてしまった時にバーネット大尉が「ウィルソ〜ン!」と叫ぶのはオーウェンのアドリブ。
これは映画『キャスト・アウェイ』の主人公が、親友のように大切にしてウィルソンと名づけていたバレーボールが海に落ちてしまった時に叫ぶセリフのパロディだそう(私は未見なのですが・・・)。
ムーア監督:ちょっとマニアックだし、どうかなとも思ったが、オーウェンのしたいようにさせておいた。結果は大成功だったよ。試写会の時、大ウケだったんだ。みんな、意味が分かったんだね。
でも、元ネタを知らない人もこれで笑う人がいるんですよね。オーウェンの名字と同じですし、それだけでも充分笑えるのかも。
オーウェンは風でストレス解消する癖がある?
これは余談ですが、オーウェンは風を相手に異常に戯れることがあるようです。
同時期に撮影した『ロイヤル・テネンバウムズ』終盤でも、ロープで作った輪を振り回しながら遊ぶシーンがあり、監督のウェス・アンダーソンが「ああ、またやってる。確かエネミー・ラインでも風で遊んでたよね」と、コメントしていました。
Photo by Buena Vista Pictures, hazlit
「オーウェンが風で遊びだしたりすると、あんまりいい兆候じゃないよ」と言う人もいます。気分がハイになっていて、自暴自棄になっている証拠なのです。
2007年の『ダージリン急行』では撮影の間、誰の目にも余るほどはしゃぎつづけ、直後に自殺を図りました(詳しくは👉オーウェンの自殺未遂ー連載①~③)。
思えば、2000年頃はストーカーの被害に遭っていた時期です。
オーウェンがはしゃいで遊ぶのは可愛い光景ですが、あまり度が過ぎる時は・・・ゾッとしますね。
あるいは、子どもの頃まったく遊ばせてもらえなかった反動もあるかもしれませんが・・・(👉兄弟と遊ぶことも許されなかった!。
🌲オーウェンは目の前に何もなくても、真に迫った演技ができる🌲
Photo by 20th Century Fox, kinorium
目の前にバーネットの姿が見えているにも関わらず、Uターンして去ってしまう救援ヘリ。バーネットは絶望し、罵声を浴びせますが、ふと周りに目を向けた時、墜落した場所を示すマリア像を見つけます。
実はこの時、ヘリコプターもマリア像も現場にはまったく存在していませんでした(もっとも、ヘリについては監督と製作総指揮者とで記憶の違いがあり、本当に飛んでいたとも言いますが・・・)。
オーウェンはこの時、何もない空に向かって必死に叫び、ただの空間を見て、あたかもマリア像を発見したかのような目つきをしたのです。
ムーア監督:下手な役者だったら、マリア像を見つけたように演じる時、変に眉を上げたり、唇を噛んだりするだろう。でも、オーウェンは素晴らしい。ただじっと見つめるだけで、あの雰囲気を完璧に出せるんだ。
絶賛していますね。彼を起用した監督は決まって「オーウェンの演技がすばらしい」と口をきわめて褒めますが、それも当然だと思います。
🌲アクシデントに見舞われながらアクション!🌲
Photo by 20th Century Fox, Amazon
ショッキングな撮影状況は2つあります。
火薬が目の前で爆発!
仲間のスタックハウスを殺され、思わず声を上げたバーネットは雨あられと注ぐ弾丸の中を必死で駆けていきます。
映画では最初の逃走シーンですが、実際の撮影はかなり進んでから行われました。
ここでもオーウェンは地雷の時と同じく、本当に爆発の中を走っています。しかし、この時は、火薬の一つがオーウェンの目の前すれすれで爆発してしまう!というアクシデントが起きてしまいます。さすがのオーウェンも、この時ばかりはショックで一瞬たじろぎました。
製作者たち:すぐ立ち直ってくれたけど、この時僕らは、これ以上オーウェンを危険に晒してはいけないと、痛感したよ。
痛感したのはいいけど、どうせならもっと早く気づいてほしいですね・・・。だって、彼らが痛感した時には、危険なシーンはほとんど終わっていたんですよ! <痛感>が役に立ったのは、追加撮影した、水を飲んでいる最中に銃撃を受けて斜面を転がり落ちていくシーンをスタントにさせたことくらい。
肩を脱臼したままサシャと戦う
今度はさらにショッキング! そう、オーウェンはさんざん危険なスタントをこなした結果、右の肩を脱臼してしまったんです! 脱臼といえば、肩の骨が外れてしまって激痛を伴う大怪我。
・サシャとの決闘シーン
⬆これらのシーンは、何と右の肩が外れた激痛のまま演じています!!!
製作者たち:よくよく観察したら、右をかばっている気もするけど・・・パッと見た目には分からないね。オーウェンは忍耐強いからね。本当に根性ある俳優だよ!
私も言われるまで気づきませんでした。皆さんはどうですか?
サシャ(ウラジミール・マシュコフ)を殺す時には右手で止めを刺しますし、レイガート少将(ジーン・ハックマン)が乗るヘリコプターが来た後の戦いも凄まじく、オーウェンは怪我をした右腕をかなり使っています。
確かに製作者たちの言うとおり、よく観察すると、痛そうに腕を抱え込んでいるのが分かりますが・・・。
それにしても、激痛の中であれほどのアクションと演技をこなせるとは! 頭が下がります。
オーウェンの忍耐強さにつけ込んじゃダメ!!!
最後に、感想を一言。
大怪我しているのに、こんな無理をさせないでください!!
脱臼は、一度外れてしまうと完治が難しい怪我。実際オーウェンはこの撮影以来、右肩を痛がることがよくあります。
よく思うのですが、映画関係者、いいえ周囲のほとんどの人はオーウェンに対して気を遣うのを忘れ過ぎ。大半が彼の忍耐強さや親切に感心して、そのまま甘えてしまっています
かわいそうに、オーウェンは頼られたらイヤとは言えない性分ですから、期待されていると思うと、気持ちに応えようと必死になります。でも、いざオーウェンが心身ともにくたびれた時は、ほとんどの人が知らんふり。
あんまりだと思いません?
オーウェンは肉体も精神もとても繊細。周囲は、彼の気遣いや忍耐を当たり前と思わずにもっと配慮するべきでしょう。
さて、長かった『エネミー・ライン』もここまで完結します。
いかがでしたか? 本作は “『トップガン』を超える戦争アクション映画” などと謳われていますが、それも納得できますね。
『トップガン』も危険の多い撮影(スタントの1人が事故死したそうです)でしたが、主役の俳優自身にかかる負担は『エネミー・ライン』のほうが遥かに上。
『エネミー・ライン』は、『クーデター』と並んでオーウェンの代表作と呼ぶべき作品です。
🌲『エネミー・ライン』を視聴する🌲
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