仇を恩で報いる! オーウェンとネッドの最大の共通点|映画『ライフ・アクアティック』解説③
※21年5月にアップした記事のリライトです。
『ライフ・アクアティック』第3弾まできました。今回はこのまえの続き、「ネッドの役柄とオーウェン本人の共通点」を語っていきます。
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オーウェンやアンダーソン映画のファンはもちろん、「映画を観るのが好き」というだけの方もぜひどうぞ。
🌊映画『ライフ・アクアティック』あらすじ・予告編🌊
ドキュメンタリー映画の製作者スティーブとその部下たち、スティーブの息子かどうか分からない海軍兵士のネッド(これをオーウェンが演じます)、不倫の子を身籠る若い新聞記者のジェーンらが織りなす人間ドラマ。
タイトルのアクアティックから連想できるように、常に海が背景に存在する作品で、様々な人間模様や感情が描かれる、かなり奥深いストーリーです。
あらすじ
予告編
キャストは第1回記事の、登場人物(キャスト)をご覧ください。
『ライフ・アクアティック』の解説
1️⃣
2️⃣
🌊オーウェン・ウィルソンの性格が表れているネッドの言動(後編)🌊
前回は、
・優しい気遣いができる
・物惜しみしない
・プライドが高く、不公平に扱われると怒る
を紹介しました。
共通点はさらにあと3つあります。
4.仇を恩で報いる
Photo by Touchstone Pictures, theartsdesk
お楽しみに取っておいた共通点。ここは、前回の最後から繫がっています。先に『ライフ・アクアティック』解説②に目を通していただけたら、分かりやすいと思います。
読むのが面倒な方は、「船員のひとりクラウス(ウィレム・デフォー)がネッド(オーウェン)をさんざんいびった過去がある」ということだけ頭に入れて、読み進めてください。
Photo by fandomwiki
さて、本題。
ネッド(オーウェン)はスティーブ(ビル・マーレイ)のチームロゴを新しくしたいと申し出、探検船の重要メンバーのイニシャルを加えてデザインします。
ここでサプライズ! 何と、
仕上がったロゴデザインには、クラウスのイニシャルが入っているのです!!!
Photo by © FOTW Flags Of The World, crwflags
びっくりですよね? 自分をいびった相手を重要人物としてロゴに入れてやる。悔しくて、できない人も多いのではないでしょうか?
しかも、ネッドの態度に恩着せがましいところは少しもありません。
ネッド:この輪は友情を表しているんだ。このKはクラウスのこと。
クラウス:でも、おまえのイニシャルはどこにあるんだ?!
ネッド:僕のはいらないよ。
スティーブ︰いや、クラウスの言うとおりだな。おまえの名前もないとだめだ!
ネッド:じゃあ、タコのそばにNを入れておく?
2度めの驚き! ネッドは、自分に辛く当たった男のイニシャルをロゴに縫いつけ、自分の名は入れていなかったんです!
アンダーソン監督はさすが、親友を知り尽くしていますね。オーウェンは自分を押し出そうとしないし、自分に酷いことをした相手であっても、相手が悪人でないかぎり許すタイプ。こうした性質を、アンダーソンはしっかりとネッドに描きこんでいますね。
クラウスは悪人ではなく、劣等感でつむじを曲げている人物です。長年誠意を込めて仕えてきたのに、スティーブが新入りのネッドばかりをかわいがることを妬んでいるだけ。
しかし、イニシャルを入れてもらったことで、態度が一変します。
Photo by Touchstone Pictures,
クラウスは、ネッドがスティーブとともにサメを探しにヘリコプターに乗り込む時、感激を隠しきれず、ネッドに深い感謝を述べます。
クラウス:旗に俺のイニシャルを入れてくれて、ありがとよ!
ネッド:どういたしまして。楽しかったよ。
クラウス:イルカのそばに縫いつけてもらって、どんな気持ちか・・・。
ネッド:気に入ってくれて嬉しいよ。
クラウス:気に入る? そんな軽いもんじゃねえよ!(ネッドに敬礼する。)この意味、分かるか?
ネッド:分かるよ。(敬礼を返す。)ありがとう、クラウス。
短いけど、ネッドの優しさがひねくれたクラウスの心を和らげたことを示す素敵なシーンです。
5.几帳面でかわいい
Photo by Touchstone Pictures,
ネッドはオーウェンをモデルにしているだけあって、とても几帳面。それも「かわいい几帳面」です。
特にかわいいのは、ジェーン(ケイト・ブランシェット)が船を降りようとするのを寂しがるシーン。
ネッド:手紙、書いてくれる?
ジェーン:もちろんよ。住所を教えて。
ネッド:実はね、もう用意したんだ。住所を書いて、切手を貼って・・・50回分の封筒だよ。書くのが楽になると思って。(中略)封筒にはそれぞれ3枚ずつ便箋を入れてる。それと書くペンも。
明らかにオーウェンの性質を活かしたシーン。
「連絡してね」と言って、住所や電話番号を書いた紙を渡すシチュエーションはよくあります。が、ここまで完璧なレターセットを用意するのはちょっと珍しいのでは?
すっかり落ち込んだ様子で、悲しそうに渡す様子は本当に純情。
Photo by toppic
もう1つ、この場面にはオーウェンの感受性の強さも織り込んであります。
ジェーン:あなたがいないと寂しくなるわ、ネッド。
ネッド:僕も寂しい。本音を言うと、胸が張り裂けそうなくらい・・・。僕って大げさだ。
ジェーン:それ、本気なの?
ネッド:うん、本当の気持ち。
もちろん、ジェーンはネッドの愛情に心打たれ、船に留まりました。
几帳面さ・かわいい愛情表現・感受性の強さなどが詰まった、オーウェンらしいシーンのひとつです。
6.周りに気を配り、ピンチに強い
Photo Touchstone Pictures,
廃墟となったホテルで、海賊と撃ち合いになったスティーブ。ネッドはクラウスと一緒にダイナマイトでホテルを爆破し、スティーブを救います。
こうした機敏な行動もオーウェンらしさの1つ。彼は周りの様子を敏感にキャッチし、誰かが困っていると、すぐに手を差し伸べます。
現実でも、オーウェンは自分の危険を顧みずに他人の危機を救ったことがありました。
『ライフ・アクアティック』の約10年後、『クーデター』で共演したレイク・ベルは、「オーウェンはいつも周りに気を配っているの」と話していましたが、まさにそのとおりです。
Photo by Touchstone Pictures, getyarn
ホテルを爆破する時、手伝いにクラウスを呼ぶのもオーウェンらしいところ。
ネッド:クラウス、ダイナマイトを持ってきて!
クラウスはこのシーンのちょっと前に、「いつも俺はB班だ」とスティーブに文句を言っています。ネッドはクラウスに助けを求めることで、クラウスのプライドを守ったんですね。
このさりげないシーンが、後のイニシャルの場面に繋がっています。
Photo by Touchstone Pictures, kino.dk
ピンチに強く、周りへの配慮を忘れない。アンダーソンは、ほんの数秒のシーンにもオーウェンらしさを細かく描きこんでいます。
つづく➡
オーウェンに興味を持って、「他の出演作品も知りたい!」という方は、⬇こちらの記事もどうぞ。
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