※21年5月にアップした記事のリライトです。
『ライフ・アクアティック』解説その2です。
前回はオーウェンと監督ウェス・アンダーソンの友情と、ネッドがオーウェンのために書かれた役であることをお話しました。
・前回の記事
では、
「具体的にネッドはどこがオーウェンに似ているのか?」
今日はこれをテーマに語っていきます。アンダーソンの思い入れが込められているので、彼の映画ファンはぜひどうぞ。
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🌊映画『ライフ・アクアティック』あらすじ・予告編🌊
ドキュメンタリー映画の製作者スティーブとその部下たち、スティーブの息子かどうか分からない海軍兵士のネッド(これをオーウェンが演じます)、不倫の子を身籠る若い新聞記者のジェーンらが織りなす人間ドラマ。
タイトルのアクアティックから連想できるように、常に海が背景に存在する作品で、様々な人間模様や感情が描かれる、かなり奥深いストーリーです。
あらすじ
予告編
キャストは第1回記事の、登場人物(キャスト)をご覧ください。
🌊オーウェン・ウィルソンの性格が表れているネッドの言動(前編)🌊
ネッドの人物像にはオーウェン本人の性格が刻印されています。アンダーソンがどのようにオーウェンの性格をストーリーに反映しているか、見ていきましょう。
1.優しい気遣いができる
Photo by Touchstone Pictures, talkfilmsociety
冒頭、スティーブ(ビル・マーレイ)が新しい映画を上映して、質疑応答に移った時。バカにしたような質問が次々と寄せられる中、ネッドはただひとり製作者のスティーブを気遣う質問を投げかけます。
ネッド:次の映画はいつ製作が始まりますか?
気まずい雰囲気を何とか救おうとする心遣いはいかにもオーウェンにふさわしい設定。主役級でありながら、さりげなく登場するのも、彼の控えめな性格に似合っています。
そういえば、ネッドはスティーブの映画をどう思っているか、いっさい口にしません。これも気遣いの表れでしょうか。
2.物惜しみしない
Photo by Touchstone Pictures, dvdizzy
「おまえは私の息子か?」とスティーブに問われて、「分かりません」と答えるネッド。もう一度聞かれても、同じ答えを繰り返します。
この率直さと素直さはオーウェンらしいですね。しかし、さらにオーウェンの性質をよく表しているのは、資金繰りに困窮しているスティーブに自分の全財産を差し出して救うこと。
スティーブがエージェントと揉めている最中に飛び込んできて、資産提供を申し出るシーンはとても印象的。
ネッド:状況はよくわからないけど、僕には27万ドルの遺産があります。それって、役に立ちますか?
自分の父かどうか分からない男の、ヒットする見込みの全くない映画のためにここまで尽くすなんて、誰でもできることではないと思いませんか? (ちなみに、27万ドルは日本円に換算すると、2900万円ほどです)。
Photo by Touchstone Pictures, EW
しかも、話はこれで終わりではありません。
スティーブは何と、ネッドのせっかくの財産を失くしてしまうのです! それも、金庫を船に積んだまま非警備水域を通って、海賊に奪われるというバカさ加減!
しかし、ネッドは何も言わず、少しも責めません。それだけでなく、ついには船のシステムまで壊れて落ち込むスティーブを励まそうとさえします。
そんなネッドが唯一自分の財産のことを言うのは、ジャガーサメの探索を諦めようとするスティーブを鼓舞する時。
ネッド:僕はこの探検に27万ドル出したんだ! 親友がサメに殺されたんだろ! だったら、(サメが見つかるところまで)案内しろよ! 行こう!
ネッドはヘリコプターでの捜索を決行し、その結果命を落としてしまいます。
3.プライドが高く、不公平に扱われると怒る
オーウェンは決しておとなしいばかりではありません。物腰は柔らかくても、心には鉄の精神が宿り、時にはかなりプライドの高さを見せつけることもあります。
オーウェンのこうした一面も当然ネッドに現れています。ネッドが誇り高い性格を見せるシーンは2つ。
Photo by Touchstone Pictures, tasteofcinema
1つめはクラウスと言い争うシーン。この映画でネッドの敵役となるのが、ベラフォンテ号(スティーブの探検船の名前)に技師として乗り込んでいるドイツ人クラウス(ウィレム・デフォー)。
彼は理不尽にネッドに嫉妬し、いきなり平手打ちを食わせたり、機会があればバカ呼ばわりまでするほど意地悪。
ネッドは平手打ちされた時、「今度、僕に触ったら歯をへし折る。分かったな?」と警告。数日後あいかわらず意地悪を続けるクラウスに怒って、「おあいこだ」と平手打ちを返します。
Photo by Touchstone Pictures,sundayswithcate
もう1度ネッドが怒るのはスティーブを相手にした時。スティーブがネッドとジェーン(ケイト・ブランシェット)の仲に嫉妬し、両者に罵詈雑言を浴びせるシーンです。
この時もネッドはスティーブに殴られると、黙って引き下がらず、しっかり殴り返しています。
オーウェンが現実でこうした反撃に出たのは、『シャンハイ・ヌーン』のバスタブシーンや、『アイ・スパイ』の髪の長さについて議論した時。
一方で敵を赦す心も持っているのがオーウェン。彼の性格にはプライドと寛容さが入り混じっていて、このバランスも当然ネッドのキャラクターに忠実に映し出されています。
特に「これはオーウェンそのもの!」と言えるシーンは・・・ここは次回のお楽しみに取っておきます。
つづく➡
オーウェンに興味を持って、「他の出演作品も知りたい!」という方は、⬇こちらの記事もどうぞ。
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