1作目はノーギャラ!オーウェン演じるエネルギッシュなジェデダイア ― 映画『ナイト・ミュージアム』シリーズ 解説①
今度はみんなご存知のあの映画、『ナイト・ミュージアム』シリーズ。
太陽が沈むと魔法の石板が光り、展示物が動き始めるファンタジックなストーリーですが、主役がベン・スティラーのせいもあって、どちらかというとドタバタコメディに仕上がっています。
オーウェンを知らない方でも、この映画のカウボーイを見せたら、90%の方は「ああ、この人がオーウェン・ウィルソンなら、知ってる!」という反応を示します。
・予告編
シリーズは3作まであり、どれも完成度の高い面白さですが、オーウェンの出番はそれほど多くないので、当サイトではシリーズをまとめて取り上げます。
☑ オーウェンがノーギャラで出演した経緯
☑ ジェデダイアとオクタヴィウスの実在と劇中の違い
☑ オーウェンとスティーブが作り上げたシーンについて
あまりに有名なので、ブログで取り上げられる機会も多いですが、ここではオーウェン演じるジェドと、ジェドとコンビを組むオクタヴィウスをメインに話していきますね。
🏰カウボーイ人形のジェデダイア🏰
Photo by 20th Century Fox
オーウェンがこのシリーズで演じたのは、ジオラマに展示されているミニチュア人形、ジェデダイア・スミス。ジェデダイア(通称:ジェド)は、攻撃的だけど友情に篤く、手際が良くて勇敢。ほぼ実在の人物に近い役づくりかもしれません。
実在のジェデダイア・スミスはどんな人?
ジェデダイア・スミスは西部の開拓に貢献した探検家。優れたリーダーシップを発揮し、粗野ながらもセンスがあって、好戦的な反面とても平和主義だったそう。
気の毒にも32歳の時にインディアンの一族に襲われて死亡してしまいましたが、その功績は西部の土地にしっかりと刻みつけられています。
オーウェンの代名詞のような役だけど、実は彼らしくない
先にも書いたように、オーウェンはジェド役で最も有名ですが、本作でしかオーウェンを観たことがないのであれば、ちょっともったいない・・・。
なぜって、ジェドの時は
・柔らかい声と話し方
・繊細な性質
・細やかな演技力
といったオーウェンの魅力があまり発揮されていないからです。
特に1作目は、荒くれ男の典型を演じていて、これだけでは彼がどれほど幅のある俳優か分からないでしょう。逆に他の作品を多く観た後に観ると、「あんな繊細な人がこんな役もできるのね!」と感心しますが・・・。
・ジェドの登場シーン
何回聞いても、この声にはびっくりします! あんなに荒い話し方をして、喉に負担がかからなかったかしら。普通はもっとソフトな声で話しますから・・・。
↑こちら
は、同時期に撮影した『トラブル・マリッジ』のワンシーン。こちらがいつものオーウェンの声です。ね? 全然違うでしょう?
🏰驚きのノーギャラ出演!🏰
タイトル通りなのですが、実は1作目のオーウェンは報酬なしの出演! ノンクレジットなので、画面に名前さえ表示されません。かなり目立つ役なのに、びっくりですね!
欲のないオーウェンの素敵な対応
構想段階では、ジェドの登場シーンはもっと少ない予定だったそう。が、いざオーウェンが演じはじめると、製作者たちはすっかりハマッてしまい、どんどん出番を増やしました。
気づいた時にはジェドは主役級の一人まで格上げされていました。
「なのに、ノンクレジットのままだったの?!」
そうなんです! 出番が増えたことで、製作者たちはさすがにカメオ扱いにするのを躊躇しだしたんですが、結局撤回はしないままでした。
何と、オーウェンはこれだけ出演時間が長くなったにも関わらず、こう言ったのです、
「カメオ出演扱いのままでいいよ。最初からそのつもりで演じたんだから、気にしないで」。
欲のない、立派な対応ですね!
ただ、製作者たちにひとこと言わせてもらうなら、オーウェンがいくらそのままでいいと表明しても、ちゃんと支払うべきだったのでは?
だって、この時オーウェンとコンビを組んだスティーブ・クーガンはクレジットされているんですよ! 不公平です。
🏰西部のカウボーイとローマの将軍のコンビ🏰
このシリーズで、ジェドはほぼオクタヴィウス将軍とコンビを組んで登場します。
Photo by 20th Century Fox, fanpop
オクタヴィウスはローマの歴史には2〜3人名前がありますが、たぶん映画に出てくるのは、事実上ローマ最初の皇帝とされるガリウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスだろうと思われます。
Photo by kotobank
史実を調べてみると、なかなか有能な将軍で、若い頃は好戦的だったものの、次第に温和な性格になっていったそう。ジェデダイアとは違い、非常に長生きしています。
そんなローマの皇帝をシリーズで演じたのは、スティーブ・クーガン。
あまり知名度の高くない俳優さんですが、ちょっとした役でいろいろな映画に出ています。
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』ではハデスを演じていましたね。主役はあまりありませんが、『80デイズ』ではジャッキー・チェンとコンビになって、主人公の科学者を好演しています。
オーウェンとはプライベートでも仲がよく、本シリーズの監督を努めたショーン・レヴィは「この二人が一緒にいると、同窓会みたいな雰囲気だったよ」と、言っていました。
Photo by Getty Images, zimbo
似て非なるリーダー
『アイ・スパイ』のアレックスとケリーは対照的なコンビでしたが、ジェドとオクタヴィウスは、ラリー(ベン・スティラー)から「きみたちは生まれは2000年違うが、とてもよく似ている」と言われるように、リーダー気質は共通しています。
ジェドとオクタヴィウスは、初め喧嘩ばかりしていますが、1作めの最後に悪者たちを追跡したのをきっかけに、親友になる設定。
ただ、いざコンビになると、似ているところより相違点のほうが目立ってきますね。
2人の特徴をまとめると、⇩こんな感じです。
ジェデダイア(ジェド)の性質
Photo by 20th Century Fox,
行動力がある
機転が利く
非常に勇敢
友達を守り、自分を犠牲にしようとする
特にジェドのこうした性質が発揮されるのは『ナイト・ミュージアム2』。
閉じ込められていた倉庫からオクタヴィウスと一緒に脱出するも、2人はすぐにマフィアたちに見つかってしまいます。ジェドはとっさにわざと自分が捕らわれ、オクタヴィウスを強引に逃がすのですが、このシーンはいかにもオーウェンらしいですね。
砂時計に閉じ込められ、刻々と死の時が迫る中でもジェドは決して弱音を吐きません。
「オーウェンはすっかり役になりきり、体はリトル、心はビッグな男を見事に演じてくれた」と、監督はオーウェンを称賛していました。
オクタヴィウスの性質
Photo by 20th Century Fox
格式を重視
細かいことにこだわる
ちょっと臆病
自分で解決するより助けを呼ぶ
オクタヴィウスは知識人タイプ。にもかかわらず、ジェドに比べるとちょっと間が抜けています。スティーブ・クーガンはこういった役が多いですね。
『ナイト・ミュージアム2』では、一刻の猶予もない時につまらない言葉の意味を知りたがるし、3作目では自分の故郷であるはずのローマにたどり着いたのに地名を逆さまに読んで「知らんな」と言うありさま。
一方で、2作目の最後には自分より遥かに体の大きいリスを何とか手なづけ、巨大なリンカーン像を味方につける頼もしさもあります。
Photo by 20th Century Fox,
↑「見よ、我が騎乗するは見るも恐ろしき生き物、リスだぞ〜!」のシーン。ローマの将軍が可愛い小動物に乗って現れるので、笑いが止まりません。
🏰2人とも脚本家! オーウェンとスティーブが作り上げた名シーン🏰
オーウェンが脚本家でもあることはブログ最初の記事に書きましたが、実はスティーブ・クーガンも脚本の才能があるそう。
『ナイト・ミュージアム2』には、そんな2人が全面的に構成したシーンが出てきます。
砂時計で死にかけるジェデダイア
Photo by 20th Century Fox, reddit
悪党のエジプト王カームンラー(ハンク・アザリア)に人質にとられ、砂時計に閉じ込められてしまったジェデダイア。オクタヴィウスは駆け寄って助け出そうとしますが、既に首まで砂に埋まってしまったジェドは諦め顔。
ちょっとfandomのスクリプトから翻訳したものを載せますね。
ジェド:無理だよ。俺の最後の姿を覚えといてくれ。オクタヴィウス、思い出してくれよ、野性的で自由なカウボーイを・・・
オクタヴィウス:最期の言葉はよせって!
ジェド:まだ続きがあるんだ。
オクタヴィウス:おい!
ジェド:俺たちの関係にぴったりの表現は、昨日の敵は今日の友!
オクタヴィウス:やめろってば!
ジェド:泣けるだろ?
オクタヴィウス:とんでもない! おまえは死なないんだよ!
オクタヴィウスは自分の兜で砂時計を割り、親友を救い出します。
監督はここがお気に入りで、編集段階でもビデオを見ながら「いいシーンだ」と、嬉しそうでした。
私もこの場面はとても好き。必死に砂時計を叩き割るオクタヴィウスもいいし、ジタバタ騒がずに潔く死んでいこうとするジェドも素敵です。
偶然の産物 ― 手をつなぐか、つながないか
Photo by 20th Century Fox, YARN
3作目で、ジェドとオクタヴィウスは体が小さいゆえに、暖房の吹出し口に引っかかって、絶命の危機に晒されます。
さて、ここではオーウェンとスティーブのとっさの会話がそのまま使われた部分があります。
ジェド:何でだよ?
オクタヴィウス:気にしないで!
(無事に脱出できてから)
ジェド:さっき手をつなごうって言った?
オクタヴィウス:いや、言ってない!
↑この会話はすべて脚本にはなかったそう。
「撮影中、急にスティーブが手を繋ごうって言うから、僕はとっさになぜ?って聞いたんだ。そしたら、気にしないで!って答える。後で、さっき手をつなごうって言ったよね?って聞いてみたら、言ってない!という反応。たまたま出来上がったシーンなんだ」と、オーウェンは回想しています。
オクタヴィウスには同性愛の傾向がある?
特に3作目では、オクタヴィウスの性的志向にちょっと疑問を抱きたくなるシーンが頻出します。
さっきの「手を繋ごう」もアヤシイですし、ランスロット卿(ダン・スティーヴンス)に向かって「魅惑的な心ときめく青い瞳」などと言って、ジェドから気持ち悪がられたりもします。
ちなみに、このシーンは字幕だけ見ていると「青い目でコケにしやがって!」となっているので、ジェドの珍妙な表情が理解できません。翻訳者にはもうちょっとセンスを考慮してもらいたいですね・・・。
話を元に戻すと、オクタヴィウスはローマの将軍ですから、同性愛の傾向があっても不思議はありません。なぜって、古代ローマでは同性愛(特に男性同士の恋愛)が推奨されていたからです。
こんな史実まで映画に散りばめてあるんですね。
最後はちょっとレベルの低い話になってしまってごめんなさい。次回はもう少しマシなエピソードを取り上げますね。
つづく➡