オーウェン・ウィルソンの映画と性格

オーウェン・ウィルソン|知られざる性格をすべて公開!

『ナイト・ミュージアム』のカウボーイや『アルマゲドン』のオスカー、『カーズ』の主役の声を担当するなど、有名作品に数多く出演している、ハリウッドの人気俳優オーウェン・ウィルソン。そんな彼の真の姿について伝えるブログです。

マティーはリサ一筋の誠実な恋人?|『幸せの始まりは』の感想

f:id:Jane-Knowing:20220924105552j:image

 

 意外と知られていそうで知られていない映画が『幸せの始まりは』。2011年の公開当時は話題になったようですが、現在は映画ファンでもあまり観ていない気がします。

 

 ジェームズ・L・ブルックス監督のこの作品は、結末にちょっと納得がいかなかったり、登場人物の言動に不自然さがあったりします。本作の人気が下火になっているのも、仕立ての甘さのせいかもしれません。

 

 しかし、いくつか欠点はあるにしても、個人的にはとても好きな作品。オーウェンはオーウェンらしいし、ヒロインを演じたリース・ウィザースプーンや第二の恋人役ポール・ラッドもとても生き生きしています。

 

f:id:Jane-Knowing:20220922141730j:image

Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

作品情報

・公開:2011年

・ジャンル:コメディ、ロマンス

・時間:121分

・出演:リース・ウィザースプーン、ポール・ラッド、オーウェン・ウィルソン、ジャック・ニコルソン他

 

 本作でのオーウェンは「一応」フラれ役です。でも「一応」そうなっているだけで、結末はちょっと解釈の余地がありそう…。

 

 ということで、今回はオーウェン演じるマティーの解説がメインとなります。

 

・予告編

 

🌷マティーは遊び人ではない?!🌷

Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 この映画は、視点を替えると規定の設定とは全然違うストーリーが見えてくるのが面白いところ

 

 オーウェンが出演する映画では、しばしば「予定されたストーリーが良い意味で大幅に変更」されます。

『マイナスマン』では殺人鬼を被害者に変更したし、『ウェディング・クラッシャーズ』でも主人公の性格とストーリーの流れに大幅に手を入れています。

マティーの女性関係はリサだけ!

 先に結論を言うと、マティーはプレイボーイとして設定されていながら、実際には真面目で誠実な恋人として観客の前に現れます

 

 逆に真面目で誠実な男性として設定されたはずのジョージは呆れるほどのプレイボーイ。

➡️関連記事

 

 マティーのことに話を戻しましょう。

 一般的にマティーは、能天気なプレイボーイでリサのことを大事にしないというイメージで知られているのですが、果たして・・・?

 

 ジョージの周りには3人もの女性。では、マティーは?

 皆さん、ちょっと目を閉じて、マティーのそばにいた女性を思い出してみてください。

 

・・・・・・???

 

 そう、実は

マティーの女性はリサ1人!

 

 プレイボーイのはずなのに、彼にはリサ以外、まったく女性の影がないのです。

大量の女性服はただの在庫?

f:id:Jane-Knowing:20210526130435j:image
Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 ブルックス監督は、マティーの家に大量の女性服を置くことで、彼のプレイボーイとしての性格を強調するつもりだったようですが、まったく逆効果

 

 まず、マティーの見せる服はどれも未使用品ばかり。明らかに袖を通したネグリジェが散らかっているならともかく、あのように新品だけでは、何かの商品にしか見えません。

 

 マティー本人は、

「もてなしの一環さ。(中略)ある点では、女性選びも工場と同じかもしれない。いくつも商品を作り、いずれ一生使えるものだけを選んで工場を畳むんだ」

と付け加えます。

 直前に多くのスポーツウーマンと付き合ったことを話していますから、まったく隠し立てするような秘密はないことが分かりますね。

 

 面白いのは、一度怒ったリサが考え直してマティーに詫びること。リサは女性服があったからといって、浮気を示すわけではないと思い直したのでしょう

 

 何度も言うように、あの服はただの在庫にしか見えませんマティーはスポーツマンですから、何かのコラボレーションで商品をストックしているのかもしれませんし・・・。

 

  ちなみに、リサが謝った時にマティーが言う「足音を聞いた時は、さらに怒られるかと思った」というセリフ、あれはオーウェンのアドリブです。

 監督がマティーの気持ちを説明する時に「きみは彼女が戻ってくる足音を聞いて、さらに怒られるかと思うんだ」と言ったのを、オーウェンがそのまましゃべったのだそう。監督はちょっとびっくりしたようですが・・・。

 

夜更けに訪ねても女の存在はなし!

f:id:Jane-Knowing:20210526133039j:image
Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 本当のプレイボーイなら、どこに行っても女の気配がするもの。しかしマティーはいつも静かに1人で過ごしています。仕事柄、パーティーに出ている時であっても、彼はひたすら給仕に専念するだけ。女はおろか、他の誰ともろくに話もしません。

 

 いきなりソフトボールのチームをクビになり、落ち込んだリサが夜更けにマティーを訪ねた時も彼は1人でした。すでにパジャマに着替え、テレビを観ながら間もなく寝ようとしている様子です。

 このシーン1つ抜き出してみても、マティーが節度あるキチンとした生活をしていることが分かりますね。

携帯電話を触っているのはパーティーの準備?

f:id:Jane-Knowing:20210526141429j:image
Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 マティー=プレイボーイ説の最大の根拠となっているのが、リサの視線に気づいて急いで携帯電話をしまい込むシーン

 

 でもマティーはこの時、特に画面を隠してはいません。後ろにリサが来ればすぐ見えるような位置で操作をしていたわけです。浮気相手と交流するなら、いくら何でも注意が足りないのでは?

 

 じゃあ、マティーはいったい何をしていたのか? これは私の勝手な推測ですが、リサの誕生日プレゼントを選んでいたのだと思います。

 

 リサの誕生日パーティーで、マティーはダイヤの時計をサプライズしますよね? 時計だけでなく、パーティー自体、あれだけ豪勢に整えたのですから、用意にはかなりの時間がかかったはず。マティーはわずかの時間も惜しんで、いろいろ手配したに違いありません。

 マティーは電話を操作しながら優しい笑みを浮かべていますが、プレゼントを選んでいる時に見せるような表情に思えるんですよね。

 

 サプライズを計画している時に、当の相手に見られたら、慌てるもの。マティーは内容を見られたのではないかと焦り、リサが勘違いしたのをいいことに軽口を叩いてごまかしたのではないでしょうか。

日本語訳のニュアンスがちょっとおかしい? マティーの軽口シーン

『ナイト・ミュージアム』もそうですが、日本語字幕のニュアンスがあまりに違いすぎて驚くことは多々あります。

 

『幸せの始まりは』で、ちょっとニュアンスのズレを感じるのが、マティーがサプライズを隠すため(?)に軽口を叩くこのシーン

 字幕では「女は私だけよね?」と不安がるリサに、マティーは「イエスだ、原則はね」と答えます。これも間違いではないのですが、私には原語のニュアンスのほうが面白く感じます。

リサ:ちゃんと一夫一婦制よね?

(中略)

マティー:もちろん、イエスさ! 当たり前だろ? 最重要の関係だよ!

リサ:最重要?

(中略)

マティー:もう僕の奔放な時代は終わったんだ。きみのことを思えば、匿名セックスだって憚られる。(中略)きみのためなら地の果てでも躊躇わずに行く。ちょっと足りないところがあるからって怒らないでくれよ。

 

 ご自身でBlu-rayやDVDをお持ちの方は、ぜひ比べてみてください。ちょっと印象が違うと思います。

 

 ところで、マティーはまさかこの話でリサが自分を疑うとは思っていなかったでしょう。彼にしてみれば、リサとの信頼関係は絶対リサが本気で自分の浮気を疑ったと知ったら逆にショックかも。

これは許せない! 致命的な字幕の誤訳

Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 軽口を叩くシーンの字幕もあまり気に入りませんが、もっと酷いのはリサとマティーが愛し合った後のシーン。

 まずは字幕の会話を紹介しましょう。

リサ:2人の共同作業。

マティー:3人もいい。

リサ:変態!

 これには腹が立ちます! オリジナルでは、マティーは「3人」とは言ってもいません。単に"At least."と言うだけ。

"at least"には、よく知られている「少なくとも」以外にも多くの意味やニュアンスで使われます。

 

 このシーンの会話を、オリジナルに忠実に訳すと、↓こうなります。

リサ:2人だから味わえるものよね。

マティー:どうなんだろうね。

リサ:変な人!

 全体の様子から見て、マティーが言った"at least"は大きな意味はなく、リサを茶化して感傷に浸らせまいとした*1発言に思えます。

 この"at least"を「3人もいい」などと訳した字幕には怒りを禁じ得ません。マティーに対する名誉毀損です!

 

🌷リサはやっぱりマティーを選ぶはず!🌷

f:id:Jane-Knowing:20210526125102j:image
Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 ジョージが3人の女性の間でフラフラするのに対し、マティーは一貫してリサだけを愛しています。

 

 では、リサは結局どちらを選ぶのか…。映画ではジョージとともにバスに乗って去りましたが、あれが本当の結末かどうかは不明。

 何と言っても、リサの愛情は最後までマティーに向けられています。マティーと別れる時、彼女は明らかに未練たっぷりですし、辛そうに泣いてさえいますよね? 

暗示的なリサの最後のセリフ

 面白いのは、ジョージから「僕を愛している?」と聞かれて、リサが困ってしまうラストシーン。引きつったように笑い、相手の手を握るのですが、じっと見つめてくるジョージに言うのは何と、

「ジロジロ見ないで!」

 しかも、これが映画最後を締めくくるセリフなんです。ブルックス監督がどう考えていようと、これではジョージに脈はありません。

 

 リサがジョージを選ぶのは、単なる同情心。人生のピンチに追い込まれて必死にすがってくるジョージを振り切れなかったのです。

 しかし、そこまでの流れを観ていれば、リサとジョージが上手くいかないのは一目で分かります。彼らの関係はどう長く続いても1日が限度でしょう。

リサとマティーの絆は堅い!

f:id:Jane-Knowing:20210526125137j:image

Photo by ©︎Columbia Pictures.LLC

 はっきり言って、ジョージはリサの人生に何の影響も及ぼしていません。

 生きがいだったソフトボールの世界から追い出され、途方に暮れて悲しんでいたリサを支えたのはマティー。マティーは明るく優しい性格でリサをしっかりと抱きとめ、心身ともにサポートしたのです。

 

 リサ自身はマティーの献身的な愛情をちゃんと理解していたとは言えません。時にはマティーを誤解したり、常識ない行動をとってマティーを傷つけたりもします。

 しかし、それでもリサがマティーを頼り、離れがたく思っているのは確か。ちょっとしたことですぐにヤキモチを焼くのも、彼女が本当にマティーを愛している現れです。

 

 さっき、リサがジョージのもとにいるのは1日が限度だろうと書きました。しかし、もっと思い切ったことを言えば、映画が終わったあの後1時間もすれば、リサはマティーのところに飛んで帰って来ると思います!

 

 人生の危機を支えてくれたマティーとの絆は、そんなに簡単に壊れるものではありません。

 

 マティーとリサの関係、もうちょっと掘り下げたいので、この映画の話をもう少し続けます。

 

つづく➡

 

 

映画の一覧に戻る

*1:この時のリサはひどく落ち込んでいて、感情を安定させるのが必要な状態。