「文句屋」と「文句あんのか男」? オーウェンのアドリブの数々 ― 映画『アイ・スパイ』の評価②
『アイ・スパイ』第2弾。今日は主に製作にまつわるお話をしましょう。
- 🛩『アイ・スパイ』のあらすじと予告編🛩
- 🛩オーウェン、ケリーとアレックスの関係が対等であることを要求🛩
- 🛩ケリーと仲良くなる場面もオーウェンが原案を出した🛩
- 🛩オーウェンは外国語に強い?🛩
- 🛩『アイ・スパイ』を配信しているところは?🛩
🛩『アイ・スパイ』のあらすじと予告編🛩
Photo by POV, impawards
あらすじ
予告編
前回の記事
🛩オーウェン、ケリーとアレックスの関係が対等であることを要求🛩
コミカルな飛行機の口論
Photo by Sony Pictures, imdb
飛行機のコミカルなシーンは、オーウェンの抗議によって生まれたもののひとつ。
元の脚本にも、これからの行動について説明するアレックス(オーウェン・ウィルソン)にケリー(エディ・マーフィー)が「8時になんかパーティには行かねえ!」とわがままを言う場面はありました。が、それはブダペストについた後に置かれていたそう。
さらに、決定的に違うのは、そのシーンもずっとケリーが優勢である予定だったことです。
これをオーウェンは飛行機の中で言い争う設定にし、アレックスとケリーの関係が対等になるように変更しました。その結果、アレックスが傲慢な口をきくケリーに毅然とした態度を取る印象的なシーンができあがったのです。
Photo by Sony Pictures, multishare
それにしても、アレックスはなかなか巧みですよね? あの手この手を使って、ケリーのわがままをやっつけようとします。
①まずはダイレクトに打ち合わせようとする。
②超小型スパイカメラや盗聴器でケリーの好奇心をくすぐる。
③お抱えパイロットを眠らせ、飛行機を急降下!
飛行機を墜落させられそうになると、さすがのケリーも多少うろたえます。
もっとも、時間通りにパーティに行くことを承知するのはブダペストに着いてからなのですが・・・。
二人の出会いのシーンでもしっかり存在を主張
Photo by Sony Pictures, imdb
その少し前、アレックスとケリーが初めて出会うシーンでも、オーウェンは二人の立場が対等であることを強調するアドリブをしています。
アレックス:きみが主役で僕がボケ役みたいに思っているようだけど、僕らは同じチームだ。きみはパスをくれればいい。僕がシュートするから。きみが喜ぶようにハデにやってやるよ」
これでは、いくら監督が「主役はエディよ!」と言ったところで無駄でしたね。オーウェンは、映画での自己存在価値をしっかり押し出しています。
前にも書いたように、普段はおとなしいオーウェンですが、一度相手の悪意を感じ取ったが最後、もの柔らかな反撃に出るのです。
🛩ケリーと仲良くなる場面もオーウェンが原案を出した🛩
アレックスをケリーと対等に張り合わせる一方で、オーウェンは二人が仲良くなるシーンも丁寧に描きました。
文句屋と文句あんのか男
Photo by Sony Pictures, imdb
ケリーの秘密保持力を試すテストの後、アレックスが「数多くのスパイがこのテストを受けたが、きみほどの合格者はいなかった」と、ケリーを褒めるシーン。
この部分の後半は完全なオーウェンのアドリブで、ケリーが喜びそうな称賛を惜しみなく浴びせます。
アレックス:きみは【文句屋】じゃなくて、【文句あんのか男】だ。【文句屋】はブツブツ文句ばっかり言って、何も行動しない。【文句あんのか男】は行動が先だ。誇り高く、決して群れない。
ケリーの傲慢さが鼻につくと思いながらも、相手のいいところはしっかり褒める。アレックスが公平な性格であることを覗わせるセリフですね。ここから二人は徐々に距離を縮めていきます。
原語ではややニュアンスの違う表現
先に上げたセリフの文句屋と文句あんのか男。なかなか面白い表現ですが、厳密に言うと、オーウェンが作り上げたアドリブのセリフはもうちょっと違います。
原語では、「Why guy」と「Why not guy」となっていて、意訳するなら「どうして男」と「何だよ男」。
続くセリフも「どうして男は、何をするにも何でやらなきゃならない?と聞くばかりで何も行動を起こさない。何だよ男は行動が先・・・」と微妙に違います。
ただ、「Why guy」と「Why not guy」はかなり日本語に訳しにくいので、文句屋と文句あんのか男になったんだと思います。
いずれにせよ、すっかり気を良くしたケリーが、「おいおい、もうすぐ8時だぞ! パーティに遅れちまう!」と、いそいそと準備を始めるのは見物。最初はあれだけゴネたのに・・・。
ちなみに、盗まれたステルス機の画像を見せられたケリーが「こりゃ葉っぱ虫だ! スイッチブレイドなんていう名より、葉っぱ虫のほうがカッコいい!」と意見を述べるのはエディのアイディア。確かに保護のために体の色を変える昆虫と姿が見えなくなるステルス機には共通点がありますよね?
下水道での身の上話
敵から逃れたアレックスとケリーが下水道に隠れ、身の上話をするシーンもオーウェンのアイディア。この場面が挿入されたのは、オーウェンが「(アレックスとケリーが)仲良くするシーンは?」と尋ねたのがきっかけなんです。
「仲良くなるシーンは?」とせがむ(?)なんて、オーウェンらしくて可愛いですね。
ここでケリーは初めて強いボクサーの仮面が外れて幼少期の話を始め、アレックスはレイチェル(ファムケ・ヤンセン)に恋していることを打ち明けて、親友になります。
このシーンもほぼオーウェンとエディそれぞれのアドリブで成り立っています。そのせいか、オーウェンのシャイな雰囲気、エディのハデだけどその気になれば親切な性質がそのまま出ていますね。
アレックス:痛い! 足が折れた!
ケリー:それ見ろ! ケリー様を風船なんかにぶら下げた罰だ!
アレックス:(足に触ってみて)大丈夫だった。折れてない。
ケリー:そいつは残念だったな!
オーウェンとエディは即興の性質が違ったとはいえ、映画を見るかぎりとてもスムース。たわいない会話でも笑わせてくれます。
🛩オーウェンは外国語に強い?🛩
Photo by Sony Pictures, insider
ブダペストへ向かう前、ケリーの黒人アシスタントがホテルの予約に手こずって、アレックスが手伝うシーンがあります。
ここでオーウェンはハンガリー語を話してみせますが、監督曰く「ハンガリー語はややこしいから、さすがのオーウェンも手こずっていたわ」。
さすがのオーウェンも???
そう、オーウェンがふだん外国語にとても強いのです!『スタスキー&ハッチ』では、アジア人の犯人に向かって韓国語で話しかけるシーンがありましたし、『ズーランダー』でもカットされたもののアジア系の言語を話す場面があったそう。
去年の日本でも、言語能力が役に立った?
オーウェンは去年から日本で闇組織の手に落ち、こうして記事を書いている今も傷だらけで横たわっていると思いますが、ある筋からの情報によれば、長く監禁されている間にもどんどん日本語を覚えているのだとか・・・。
まあ、自分の目で確認したことではないので、細かいところは分かりませんが、オーウェンなら難しい言語でもたちまち吸収するだろうとは思いますね。
「Janeってば、何を物騒な話をしているの???」
そうそう、ご存知ない方もいらっしゃいますよね。ごめんなさい。この件については⬇️を参照ください。
大丈夫! 世界的に捜査が動き出しましたから、もうじき全員が解放されて、平和が訪れます!!!
『アイ・スパイ』は国際的犯罪を解決するストーリー。ある点では今の情勢にぴったりかもしれませんね。
この映画、もう少し続けます。
つづく➡
🛩『アイ・スパイ』を配信しているところは?🛩
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