マックイーンがクルーズにレースを譲るのはオーウェンのアイデア|『カーズ/クロスロード』の魅力
ついに、『カーズ/クロスロード』まで来ました。
最終回の内容は
☑『クロスロード』の印象的なシーン
☑ マックイーン歌うズンバの製作エピソード
☑ オーウェンが変更したラストシーン
言うまでもなく、オーウェンらしさが発揮された名作です。
🚦『カーズ/クロスロード』に見るオーウェンらしさ🚦
Photo by©︎AFP via Getty Images
『カーズ2』がスパイアクション系に傾いていたのに対し、『クロスロード』では再びマックイーン個人の物語。
結末は1作めと同様、オーウェンらしい優しさが描かれています。
ズンバを歌うのを嫌がった?
トレーナーのクルーズは準備運動にズンバを取り入れる現代人。
マックイーンはこの踊りを嫌い、クルーズのトレーナーとしての腕の悪さにもイライラして、ついには怒鳴りつけてしまいます。
しかし映画の中盤には、マックイーンがクルーズに詫びるためにズンバをしてみせるシーンが出てきます。
さて、このズンバシーンはオーウェンにとってかなり苦痛でした。彼はマックイーンと同じで、この手のダンスはとても苦手。
ズンバ収録時にはかなり縮こまってしまい、やっと投げ縄を投げるような仕草をしながら歌いました。
そばで見ていた製作者たちは、
「オーウェンは恥ずかしがったあげく、見えない投げ縄を操りながら歌うのが面白かった」
と、言っていました。
オーウェンは本当に「歌もダンスも下手」なのか
オーウェンはもともと自分で「歌やダンスが下手」と言っています。
でも、『スタスキー&ハッチ』などを聞いた感じでは、オーウェンの歌は決して下手ではありません。声は細めだけど、心地よい歌い方でチャーミング。
・関連記事➡『アイ・スパイ』で歌うのを嫌がったオーウェン
『ホールパス』
Photo by ©︎Warner Bros.
一方ダンスは『ホールパス』や『スタスキー』にディスコシーンがありましたが、ちょっとぎこちない印象。
『スタスキー』ではベン・スティラーが華麗なダンスを披露し、圧倒的な差をつけられています。
『ウェディング・クラッシャーズ』でも、ステップの踏み方でヴィンス・ヴォーンに負けているので、「踊りが苦手」というのはオーウェンの自覚通りみたいですね。
オーウェンの人生を彷彿させるマックイーンのクラッシュシーン
Photo by ©︎Pixar/Disney
物語が始まってしばらくして、マックイーンが若手の車に負けまいとふんばった挙げ句にクラッシュするシーンがあります。
事故そのものも確かに衝撃的ですが、よけいショックなのは周囲を走りまわる若手のレースカーたち。何と、マックイーンが何度も横転して倒れたのに、彼らはゴールを目指してそのまま走り去っていくのです!
若い頃のマックイーンはキングが倒れた時、勝利を放棄して助けました(キングを助けるマックイーン
しかし、『クロスロード』でマックイーンが怪我をした時、心配してくれるレーサーはいないのです。
1作めでドックが語っていたレース界の冷たさがこのシーンの背景にそのまま描き出されていますね。
マックイーンもオーウェンも周囲から愛されているのが強み!
Photo by ©︎Fox News
いっぽうで、マックイーンがサリーや友人たちから温かく回復を見守ってもらえたように、オーウェンも多くの人から愛されているのは事実。
例えば2007年にオーウェンが自殺未遂(事件の真相はまだ不明なところも多いですが)を起こした時、ベン・スティラーやウェス・アンダーソンのような親友は心から同情を寄せ、力になろうとしました。
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誰よりも理不尽な仕打ちを受け、誰よりも愛される。どんな人生にも矛盾はあるとはいえ、オーウェンの場合は両極端で波が激しいようです。
感動的なラストはオーウェンの提案
Photo by ©︎Disney/Pixar
『クロスロード』初期のストーリーボードには、マックイーンが訓練の末にパワーを取り戻し、ストームを相手に見事な勝利を手にする様が描かれていました。
しかし、オーウェンはこれを気に入らず、マックイーンが途中でレースをクルーズに譲ることを提案。
これが採用されて、映画は仕上げられたのです。
自分のプライドをかけた最後のレースであったにも関わらず、クルーズにレーサーになるチャンスを与える展開は、心優しいオーウェンらしいアイディア。
製作者:だから、マックイーンがピストンカップで優勝するシーンがシリーズに1つもないんだよ。
ピクサーのスタッフは苦笑していましたが、オーウェンの性質にはこの結末のほうが合います。
マックイーン:僕がきみにチャンスをあげられるチャンスはこれが最後なんだ。
代走を遠慮するクルーズを、マックイーンはこう言ってレースに連れていきます。クルーズはストームの執拗な妨害を受けながらも、マックイーンの的確な指示に従って走り続け、見事に優勝を飾ることに。
1作目のキングを救うシーンに匹敵する、オーウェンらしい心温まるラストです。
エンディングでマックイーンとクルーズが寄り添いながら走るのも微笑ましくていいですね。
🚦『カーズ』シリーズは大人におすすめの素晴らしいアニメ🚦
Photo by ©︎Disney/Pixar
アニメには珍しいほど深みのある物語に仕上がった『カーズ』シリーズ。子供ももちろん楽しめますが、内容の良さはむしろ大人になってからのほうが味わえる、奥行きのあるストーリーです。
数多いピクサーのアニメの中でも、『カーズ』は特に秀でているシリーズでしょう。
擬人化された車の世界というのはユニークで面白く、そこにオーウェンらしいアイデアがたっぷり込められて、近年最高のアニメに仕上がっています。
・『カーズ』シリーズ解説一覧