ミサイル追撃後のシーンで、オーウェンはクルーを気遣って険しい山に! − 映画『エネミー・ライン』解説②
『エネミー・ライン』第2弾です。今回のテーマは、
などについて。
この前は、配役が決まった経緯とオーウェンが辞職を申し出るシーンの改善を望んだエピソードで終わってしまいました。
この映画の解説は、書きたいことがいろいろあるから長くなりそう・・・。
🌲『エネミー・ライン』のあらすじと予告編🌲
Photo by hanbunorita
偵察中に敵地に墜落した海軍兵士が命からがら逃げ伸び、ひそかに蔓延る悪を撲滅させるストーリーです。
あらすじ
予告編
前回の記事
🌲オーウェンはバーネット大尉の人物像を全面的に変更🌲
どの映画でも、監督やから許される範囲で独自性を打ち出すオーウェン。『エネミー・ライン』もご多分に漏れず、当初の予定からいろいろ変更しています。
性格を穏やかに
最初の脚本では、バーネット大尉(オーウェン・ウィルソン)は熱血漢でカッとなりやすい海軍パイロットとして描かれていたそう。脚本家のイメージでは、『トップガン』のマーヴェリックに近い性格だったんですね。
Photo by Paramount Pictures, CNN
しかし、オーウェンはもっと穏やかな性格を望みました。セリフや態度を彼の考えで変更した結果、忍耐強くて、冷静で頭が切れ、そしてほどよくお茶目な面もある海軍兵士が誕生。
Photo by 20th Century Fox, jateng
オーウェンは陸軍の訓練を受けたことがありますし、デビュー作の『アンソニーのハッピーモーテル』失敗後は1度海軍に入ろうとしていましたから、ある意味で兵士の素質は非常に備わっているとも言えますね。
なぜ海軍に入らなかったかは、『ライフ・アクアティック』解説①ー何の前触れもなく、ハリウッドから招待の手紙が届く!の項目をご覧ください。
職務がパイロットから航空士に
バーネット大尉の職務も変更されました。バーネット大尉はパイロットだったのですが、オーウェンの提案で航空士になり、おかげで偵察中にレーダー探知機で土地の不審な雰囲気に気づくのが大尉であるという自然な流れになりました。
・虐殺現場を撮影してしまったためにミサイルに追われるシーン
ついでながら、明らかに不審なものを見つけた時、ちゃんと確認しないと気が済まないバーネット大尉の行動は、オーウェン本人にも通じるものがあります。
バーネット大尉は、『クーデター』 のジャックほどオーウェンに似ているわけではないものの、彼の考えが取り入れられているだけあって、やはり共通点も多いですね。
撮影前に海軍の訓練を受ける
映画に全面協力してくれたアメリカ海軍ですが、撮影に当たって1つ条件をつけました。それは、「海軍兵士を演じる俳優に海軍の訓練を受けさせ、リアルな演技をさせること」。
この方針の下、オーウェンは海軍が着る制服一式をすべて身に着け、戦闘機の訓練もしました。戦闘機に乗り込む時、「乗ったら僕が指示出すよ!」とはしゃいでいるのが可愛いですね。
『トップガン』撮影の時に戦闘機の訓練を受けた俳優たちは気分が悪くなってしまったようですが、少なくともオーウェンは平気だったみたいです。戦闘機から降りてインタビューを受けたオーウェンは楽しそうで、ぴんぴんしていました。
乗り物酔いには強いんでしょうか?
🌲オーウェンは時間短縮にも貢献🌲
オーウェンは完ぺきな演技をするだけでなく、撮影陣や映画会社の手を大いに省いてやることのできる俳優。この『エネミー・ライン』では特にその能力をフルに発揮しました。
撮影陣の苦労を減らすため山の頂上へ
Photo by 20th Century Fox, fansshare
屋外でのロケがほとんどの映画では天候は何より大事な条件の一つ。
『エネミー・ライン』のロケ地はあまり環境の整っていないスロヴァキアで、おまけに季節は冬でした。撮影期間中、クルーたちは日照時間の短さには悩まされたそうです。
この映画で最初にオーウェンを撮影したのが、敵地に墜落後初めて無線で連絡するシーンですが、この時も初っ端から天気に振り回されてしまいました。オーウェンを山の真ん中あたりで撮影するつもりだったのに、曇り空のせいで予定の場所にまったく日が当たらず、撮るのが不可能になってしまったのです。
監督が撮影クルーと「予定の場所に日が当たらないから、晴れるのを辛抱強く待つしかないね・・・」と、話し合っていると、それを小耳に挟んだオーウェンは驚くべき行動を起こしました。
問題の山はかなり高さがあり、頂上は障害物がなくて、曇り空でも唯一光が当たっていました。オーウェンもすぐそれに気づいたのでしょう。
何と、
頂上めざして、どう見ても危険な険しい山を黙々と登りだしたのです!!!
これには監督も仰天!
ムーア監督:大抵の俳優は、まず第一に自分の身の安全を考えるだろう? ちょっとでも危険なことは、頼んでも嫌がるものなんだ。でも、オーウェンは違う。必要とあれば、どんなことでも協力を惜しまないんだ。
オーウェンは皆が驚く中、必死で頂上まで登り上がり、さらにはカメラの位置を見ながら、クルーにとって最も楽に撮影できると思える場所まで移動しました。撮影が滞りなく済んだのは言うまでもありません。
本当に勇気がありますね。
適切な判断力で編集時間を短縮
Photo by 20th Century Fox, fandom
製作者たちが感心したオーウェンの才能の一つが即興性のある演技。
オーウェンは脚本をすっかり暗記しても、撮影中の空気を見ながら、セリフを飛ばしたり、新しい言葉を挟んだりしていく。カメラを回している間に、オーウェンはセリフをどんどん変えていくから、周りはあっけにとられる。映画会社は初めのうち、これでは脚本と違うとイライラしていたが、僕らは何とかなだめて、オーウェンの思うように演じてもらったんだ。映画会社は、編集段階になって初めて彼のスゴさに気づいたよ。
監督の言うとおり、映画会社がハッとしたのは編集段階になった時。オーウェンが演じたバーネットの場面は未編集のままでも完璧で、手を入れる必要がなかったのです!
オーウェンは撮影する時点で、どこが無駄で、何を付け加えればいいか本能的に分かる俳優なんですね。ただでさえ編集するものが多い映画会社にとって、これより助かることはありません。
実際、20世紀フォックス(この時の映画会社)はオーウェンの才能に頭が下がる思いだったそうですよ。
オーウェンが時間短縮に貢献したエピソードはあとちょっと残っているので、次回に続けますね。
つづく➡️
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