あべこべの設定が玉に瑕!『トラブル・マリッジ』のデュプリーとカール
明るく楽しく、ちょっぴり感傷的なところもある可愛らしいコメディ《You,me,and Dupree》。
でも、本作にはあちこちに設定の矛盾があって、観客を混乱させる部分があります。
問題の原因は、デュプリー(オーウェン・ウィルソン)とカール(マット・ディロン)の役者がもともと逆に設定されていたせいです。
この記事では、本作の矛盾を感じるシーンをまとめてみます。『トラブル・マリッジ』をご存じない方はあらすじ・登場人物にざっと目を通していただくと、本記事がより楽しめるかと思います。
🧸カールとデュプリーのごちゃ混ぜ設定が混乱を招く🧸
さっき書きましたが、元々オーウェンとマット・ディロンの役はそれぞれ逆の予定でした。
つまりオーウェンが新婚の夫カールを、マット・ディロンがデュプリーを演じるはずだったらしいのです。
役名がどう設定されていたかは不明です。「ランドルフ・デュプリー」が夫の名前だったかもしれないし、「カール」は職にあぶれて転がり込んでくる友人だったかもしれません。
名前のことはともかく、本作では「オーウェンが新婚の夫を演じていた時の映像を無理やり後で編集したのでは?」と疑いたくなる矛盾がたくさん見つかります。
1.どんちゃんパーティー
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
カールは仕事から帰ってくると、デュプリーとニール(セス・ローゲン)が一緒にテレビでサッカーの試合を観ているところに遭遇。
腹を立てていたカールは二人に当たり散らしますが、デュプリーに慰められ、思い切って友達を呼んで騒ぐことにします。
このシーンは前半と後半であまりにも状況が変わるので、戸惑います。
⑴カールが「ナチョスを作る」と台所へ行き、デュプリーはソファに戻る。
⑵カットが切り替わると、カールはテレビを見ながらガヤガヤ騒いでいて、デュプリーが台所にいる。
⑵の部分でマット・ディロンはだらしなく寝そべり、タバコの灰を撒き散らしてもお構いなし。ここでのマット・ディロンはいったいどっちを演じているんでしょう?
そして、⑵の時デュプリーの姿はどこにもなく、後でエプロン姿でマルガリータを作って持ってきます。
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
前半では、カールが「ナチョスを作るよ」と言っておもてなしの準備を始めたはずなのに、次のショットではデュプリーがマルガリータを作っているのはちょっと変。
2.モリーの怒りの矛先はどちらに?
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
続くシーンでもずっと矛盾し続けます。
⑴どんちゃん騒ぎの最中に帰宅したモリーは、あまりの散らかりように呆れ、カールを咎める。デュプリーが片づけようとするものの、モリーは彼を止め、「あくまでも責任はカールにある」という態度を見せる。
⑵翌日、カールがモリーに謝罪。
⑶モリーはカールとランチを食べながら、「デュプリーの起こす騒ぎにはやりきれない」と愚痴をこぼす。
頭にクエスチョンマークがたくさん浮かびます。⑴でモリーは明らかにカールに怒っているのに、⑶でなぜ突然方向変換するのか。
⑴のシーンで「掃除しよう」と動き出すオーウェンは夫役なんでしょうか? そうでないとしたら、モリーの言動がまったく納得できません。
3.いつも家事をするのはデュプリー
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
デュプリーに「家に置いてもらいたきゃまともになれ。家事も手伝え」などとお説教するカール。
でも、
そう偉そうな口をきくカールはいつ家事をしてるの?
目を凝らして鑑賞しても、カールは一度も妻を手伝っていません。
一方、デュプリーのほうは何度も家事をしています。朝食を整え、お酒を作り、ディナーを用意し、あげくには完璧に掃除をするシーンまであります。
お邪魔虫のはずのデュプリーが家事を完璧にこなし、カールがまったく何もしないのは、設定の上で言えば不自然。
やはりあべこべに感じます。
4.トイレの故障を無視しているのは…?
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
トイレが壊れた騒ぎのシーン。デュプリーが夫妻の部屋に駆け込んだ翌朝、モリーが悲鳴を上げながらトイレの詰まりを直そうとしている場面があります。
ここで不思議なのは、カールがモリーの悲鳴を無視し、カマトトぶって寝転がっていること。このマット・ディロンはいったいどっちの役なのか…。
少なくともカールの態度としては、まったく感心できません!
5.焼け跡を片付けるのは誰?
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
火事の翌日、戻ってきたデュプリーが焦げ落ちた居間をテキパキと片付けて、窓枠を修理し、さらには新品のソファまで買ってくるシーン。
これはオーウェンがどちらを演じていたとしてもしっくり馴染む場面ですね。
完成版の通り、デュプリーが埋め合わせに一生懸命働いたと考えても可愛いし、カールがデュプリーの散らかした後を必死で片付けているとも取れます。
ただ、居間をきれいに修理するシーンにモリーは出てくるのに、カールが登場しないのはちょっと不自然な気もしますが…。
6.台所を整理しているのはデュプリー
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
カールはモリーともデュプリーとも喧嘩し、家の中でひとり孤立してしまいます。
そうした状況の中で差し挟まれるちょっと奇妙な朝食の場面。
モリーとデュプリーは一緒に並んで食事をし、新聞を仲良く取り替えっこして、気軽なジョークを飛ばし合います。
面白いのは、モリーが「オートミールがなくなったわ」と言った時、収納場所を教えるのがデュプリーであること。つまり、オーウェン演じる人物は家の状況に通じているわけです。
いったいカールは何をしてるんでしょうか? 怠け者にしか見えません…。
🧸結論:迷惑なのはデュプリーではなくカール!🧸
Photo by ©︎Universal City Studios LLC
映画を観ていると、とにかくカールには始終イライラさせられます。
☑️ 自分は勝手な行動をとるのにデュプリーばかり責める
☑️ 家事を手伝わずに散らかしてまわる
☑️ 自分の不始末の責任をデュプリーに押し付ける
☑️ 根拠なくデュプリーと妻の仲を疑い、デュプリーを殺しかける
映画のラストも、さんざんデュプリーに迷惑をかけておきながら感謝の言葉一つありません。
でも、こうしたカールのイヤな雰囲気は大部分、役柄を途中で交代したのが原因かもしれません。
マット・ディロンがデュプリーを演じている時のシーンがあちこちに混ざり込むせいで、カールの人物像に矛盾が生じたようです。
結果として、あらすじやキャッチコピーとは裏腹に、迷惑なキャラクターはデュプリーではなくカールになってしまっています。
余談:もしマット・ディロンがお邪魔虫になったら?
マット・ディロンはインタビューで面白いことを言っています。
もし俺がお邪魔虫になったとしたらさ、まず音楽で迷惑を掛けるだろうと思うな。大音量でバンバンかけるタイプなんでね。あとは車だ。俺の運転はハチャメチャで、周りから文句をつけられるくらいなんだよ。
何となく分かる気がします…。でも、マット・ディロンのいいところは、自分の欠点をよく分かっていて、率直なところかもしれませんね。