隣の芝生を青く思わずに〜オーウェンの生き方 −映画『マーリー、世界一おバカな犬』製作裏話①
Twitterでリクエストをいただいていたので、今回は『マーリー』を取り上げます。
Photo by 20th Century Pictures, filmaffinity
2008年公開。原作はアメリカのジャーナリスト、ジョン・グローガンが書いた自伝的回想録。オーウェンにとっては、あのショッキングな自殺未遂の直後に撮った映画でもあります。
・あらすじ
・予告編
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ラブラドール・レトリバーの愛らしさ、ごく普通の家庭を描いた微笑ましいストーリー、主役の夫婦を演じたオーウェン・ウィルソンとジェニファー・アニストンの魅力などで、世界的に大ヒットしました。
でも、ここではいつも通り、オーウェンにスポットを当ててお話しさせていただきますね。
💮最もオーウェンらしくない役柄💮
Photo by 20th Century Fox,wboc
びっくりなさった方もいるかもしれませんね。
確かにここでの役柄はプレイボーイでもなければ、泥棒でもないのですから、オーウェンが演じた役の中ではとても良い部類のはず。
それにも関わらず、『マーリー』のジョンはオーウェンにまったく似合わない役柄なのです。
確かにここでの役柄はプレイボーイでもなければ、泥棒でもないのですから、オーウェンが演じた役の中ではとても良い部類のはず。
それにも関わらず、『マーリー』のジョンはオーウェンにまったく似合わない役柄なのです。
『シャンハイ』二部作のロイ・オバノンや『幸せの始まりは』のマティーは、役柄の本質としてはオーウェンと真反対ながら、彼自身の個性で見事にカバーし、観客を納得させてしまう好人物に変貌させていますよね?
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しかし、『マーリー』のジョンではそれがありません。
原作通りに作ったのがオーウェンの個性にマイナスになった?
原因は、おそらくこの映画が実話に基づいているせいでしょう。
Photo by hachette
⬆️実在のジョン・グローガン。ちょっとはしこい感じの男性に見えますね。どう見ても、オーウェンとは性格もタイプも違います。
映画にはグローガン本人もトレーニングシーンにカメオ出演(←私は気づかなかったのですが)し、メイキング映像にも顔を出していますから、当然、製作は原作者である彼の意向に沿うように進められたでしょう。
オーウェンは即興性に優れた俳優ですから、脚本通りに演じるのではなく、周囲の雰囲気や状況でセリフを変えていくのを好むタイプ。もちろん、ジョン役の時もアドリブは混ざっていたようですが、それさえも実在のジョン・グローガンのイメージに合わせたものになっています。
どれほど似合わない役を演じた時でも、『マーリー』のジョン役ほどオーウェンの個性が消されている映画は珍しいですね。
では具体的には、どこが彼らしくないのか? ちょっとリストアップしてみますね。
1.現状に満足できない
Photo by 20th Century Fox, livekindly
ジョン・グローガンはとにかくじっと落ち着けない性格ですよね? 仕事に関しても、↓この経緯はどう思いますか?
記者として就職➡️つまらない事件しか書けないことに不満➡️上司からコラムニストになるよう言われ、不承不承引き受ける➡️日常生活を面白おかしく書くことで人気を上げ、自分も楽しくなる➡️人を傷つけるようなコラムを書いて非難続出➡️コラムに飽きる➡️新しい新聞社から、念願の記者としてのオファーを受ける➡️好きなように書けないと不満➡️コラムニストとして働きたいと要請
まあ、映画で描かれているのは約12年ほどの年月ですし、その間の大半を地道にコラムを書いて稼いでいたのですから、仕事ができないとは程遠いでしょう。
問題はジョンの姿勢。映画の中でも妻のジェニー(ジェニファー・アニストン)から「時々あなたにうんざりするわ。いつもないものばかり求めているじゃないの」と、言われています。
オーウェンはジョンという役について、「素敵な奥さんと可愛い子どもたちがいるのに、彼はどこか独身生活に憧れているんだ」と、ちょっと不満そうなニュアンスで語り、さらに次のような意見を述べています。「隣の芝生は青く見えるけど、人間は誰でも今置かれた状況で精いっぱい生きていかなくちゃいけない。最終的にジョンはそれを学んだけどね」。
オーウェンらしい発言ですね。彼は隣の芝生を青く思わず、強い信念を持って、まっすぐに生きている人。目先にとらわれて、パッと別の道に切り替えるタイプではありません。
もちろん、オーウェンも人生に不満があるからこそ悲惨な自殺未遂を起こしたのですが・・・。でも、彼の絶望は必死に生きようとした挙げ句に生まれた感情なのです。オーウェンのようにいつも人のためを思いやり、恩を仇で返されても黙って許し・・・そして自分の幸せはどこにもない!という状態になれば、死にたくなるのも無理はありません。
ジョンの<ないものねだり>にオーウェンが共感できないのは当然でしょうね。
2.自分勝手な行動
Photo by 20th Century Fox, the-moviesblog
1の項目と繋がるところもありますが、ジョンは(特に最初のうちは)気まぐれですよね? 赤ちゃんの件1つとっても(↓ここからまたプロセス式)、
子供を作るのを面倒がって練習代わりに犬を飼う➡️ようやく決心して妻と子づくりを開始➡️仕事仲間から大きな取材の話を聞いて飛びつく➡️すでに妻が妊娠していることを知って断念
ちゃんと断念するからいいのですが、旅行の多い仕事を持ちかけられたからといって、あっさり子作りを中断しようとするのは配慮が足りませんね。これもオーウェンらしくない点として数えるべき設定です。ジョンのこの行動も、やはり<隣の芝生>思考でしょう。
ところで、ちょっと話は違いますが、このシーンには面白いNGがありました。
Photo by 20th Century Fox, reellifewithjane
ジェニファー・アニストン演じる妻・ジェニーが「(初めて母親になる緊張で)心臓がドキドキしてるの。触ってみて」と、ジョン(オーウェン・ウィルソン)の手を自分の胸に当てたところで、オーウェンは真顔で「いや、ドキドキしてるんじゃない。きみの心臓、冷たすぎる! 止まっちゃってるよ!」
これにはジェニファーも大爆笑でしたね。メイキングで彼女は、「オーウェンがいると、それまでピリピリしていた撮影現場も、とても和やかになるの。優しくて、本当にいい人よ」と言っていました。
オーウェンは自分が辛くても、限界まで周りを笑顔にしようとする人なんです。「心臓が止まっちゃってるよ!」というアドリブも、和ませるにはピッタリですよね。
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