オーウェン・ウィルソンの映画と性格

オーウェン・ウィルソン|知られざる性格をすべて公開!

『ナイト・ミュージアム』のカウボーイや『アルマゲドン』のオスカー、『カーズ』の主役の声を担当するなど、有名作品に数多く出演している、ハリウッドの人気俳優オーウェン・ウィルソン。そんな彼の真の姿について伝えるブログです。

凝縮された面白さ!『ビッグ・バウンス』のアイロニー溢れるストーリー

ビッグ・バウンス ネタバレ

 

 引き継ぎ『ビッグ・バウンス』の話題です。

 なぜか異常なほど貶されていますが、実際にはかなり面白い映画。キャストも豪華、舞台はあっけらかんと明るいハワイなので、意地悪な心は捨てて、思いきり楽しみましょう。

The Big Bounce

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

作品情報

・公開:2004年

・ジャンル:コメディ

・時間:81分

・出演:オーウェン・ウィルソン、サラ・フォスター、モーガン・フリーマン、チャーリー・シーン他

 

 前回の記事で書いたように、日本人は本作のストーリーについていけないようです。日本語で書かれた否定的なレビューの大半は「物語が理解できない」せいでした。

➡︎関連記事

 

 そこで、この記事ではストーリー整理を行いますね。

 

🏝キャラクターの心理を探る🏝

 主人公ジャックを除く全員が互いを騙し合い、ラストに観客をびっくりさせる『ビッグ・バウンス』。ストーリーを整理するためには、キャラクターの心理を解明するほうが早いです。

 

ジャックは現代版ロビンフッド?

オーウェン・ウィルソン ジャック

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

 まずは主人公のジャック。彼は泥棒ですが、利己的な泥棒ではありません。基本的には自分でしっかり働いています。

 

 ジャックが盗むのは、必ず他人のため。本作で強盗を働くのは、

❶悪友フランクに泣きつかれた時。

❷リッチーの賄賂金を押収するため。

の2回*1

 

 フランクの時は盗みを強制されたあげく、取り分はすべて取られてしまう有り様。

 リッチーの賄賂金を押収することは、現地人とウォルター判事のためになることで、やはり他人の利害が絡んでいます。

 

 ジャックはむしろ、ロビン・フッドの現代版のような性格。映画が始まって早々、彼はハワイの現地人を庇い、工場現場の監督とトラブルになります。

ジャック:「バカ黒んぼ」なんて言っちゃいけないよ! 時代錯誤もいいとこだ!

 この発言でジャックはクビにされます。しかし、現地人たちからは絶大な支持を得て、彼が姿を現しただけで拍手喝采が起きる人気者になります。

 劇中何度もジャックに付き纏い、ラストでは同じ車に乗り込んでいる「9号室」と名乗る女も恐らくは現地人。ジャックがハワイ民族を守ったことに感激して、想いを寄せたのかもしれません。

殺人計画の全貌

モーガン・フリーマン ビッグバウンス

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

 強盗計画と思っていたら、ラスト近くになって急にリッチーの死体が転がってきて、観客はびっくりしますよね。この後、リッチーの妻アリソンと判事のウォルターが隠蔽のためにあれこれ議論して、コミカルな犯罪の会話が続きます。

 

 彼らの会話と、後でナンシーがジャックに説明するシーンで事件は分かりすぎるほど理解できる…はず。

 しかし、あいにく日本人は丁寧すぎる描写でも理解できないらしいので、この場を借りて悪人たちの【殺人計画】を整理しておきましょう。

悪事の真相

❶治安判事ウォルターとアリソンは愛人関係。

❷ナンシーが目撃して脅迫しようとしたところを2人は口止めした。

❸ウォルターがアリソンの夫リッチーを殺害する計画を立てる。

❹強盗がリッチーを殺したように装うため、強盗役にジャックを選び、リッチーの家に誘い込む。

❺アリソンは夫に睡眠薬を飲ませて眠らせておき、ジャックが現れたところで射殺。その後バットでリッチーを殴り殺し、「強盗がリッチーを殺し、アリソンが正当防衛で強盗を射殺した」ように装うつもりだった。

 しかし本編をご覧のとおり、彼らの計画は大失敗します。

ジャックが命拾いしたのは勘のおかげ

Owen Wilson Big Bounce

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

「ジャックは勘がいいんだ」。オーウェンはインタビューで語っていますが、ジャックが殺されずに済んだのは、まさに勘の良さと慎重だったおかげ。

 

 ジャックは室内にアリソンの姿を見て、家に踏み込むのを留まりました。しかし、一緒に来たフランク(いつもジャックからお金を搾り取る悪友)は軽率にも敷居を跨ぎ、アリソンから撃たれます。

 

 個人的には、この展開が大好き。さんざんジャックを利用し、お金を巻き上げてきたフランクが間違って撃たれるというのは因果応報。ブラックユーモアですが、実に痛快です。

 アリソンが人違いしたために計画が狂い、ウォルターと2人でオロオロするのも面白いですね。

ナンシーを信じるべきか否か?

サラ・フォスター ナンシー

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

 ナンシーの役割は、ジャックがタイミングよく戸口に現れるように仕組むことでした。

 ジャックはフランクが撃たれたのを見て、計画をすべて見抜き、「僕をハメようとしたな」とナンシーに詰め寄りました。

 

 一方ナンシーは最後まで何度も(殺人現場にいたのは)ジャックの命を助けたかったから」と必死に訴えます。

 さて、ナンシーは嘘をついているのか、真実を述べているのか。

 

 嘘をつく人は言うたびに内容が変わります。しかし、ナンシーは最後の最後まで話は一貫しています

ナンシー:殺すつもりの相手に金庫の暗証番号なんて渡さないわ。そうでしょう?

 この発言が論理的かどうかはともかく、彼女は本当のことを言っているように感じます。

 確かに画面上でも、ジャックが殺されるのを防ごうとした様子は見られたし、ジャックが生きていると分かった時の喜びも本物でしょう。

 

 ジャック自身も最後に独りごとを言います。

ジャック:ウォルターが言っていた。「物事はたまに見た通りのこともある。ちょっとした運を喜べ」。

 

🏝理屈抜きにアイロニーを楽しもう!🏝

ビッグ・バウンス 2004

Photo by ©︎Warner Bros.LLC

 ハワイの明るい海と太陽の中で、バカンス風に進む物語。それだけに、ラスト近くにいきなりリッチーの死体が階段を転がってくるのは観客をびっくりさせます。

 

 しかし、本作で殺されるのはクズのような人間2人だけ。リッチーはお金のためなら他人を踏みにじるのも厭わない強欲な男だし、フランクはジャックを蝕む害虫のような人物。

 

 では、彼らを殺したアリソンとウォルターは?

 

 もちろん、彼らもクズです。さっさと死体を始末して責任をナンシー1人に被せ、ラストでは悠々とクルーズ船でバカンスを楽しんでいます。

 でも私は彼らが無事で済むとは思いません。あの2人は急に変な海に迷い込んで、遭難しそうな気が…。まあ、私の勝手な想像は置いておきましょう。

 

 同情や悲哀を呼ばずに徹底的なアイロニーでラストを彩っているのが、この映画の面白いところ

 ぜひ、あなたも本作の痛烈なユーモアを味わってみてください。

 

 

・『ビッグ・バウンス』の他の記事

*1:途中でナンシーにせがまれて車を盗んでみせるシーンはありますが、これは返す前提だったようなので、ここには含めていません。