『ビッグ・バウンス』は過小評価されている? 配信で観られるのはどこ?
ブログを始めて1年8か月。オーウェンらしさが最大限に発揮された映画を優先的に取り上げ、気づけば18作品を記事にしていました。
最近は新記事よりリライトが多めですが、1か月ぶりに「まだ解説していない映画」を取り上げますね。
本日からのテーマは…『ビッグ・バウンス』!
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
・公開:2004年
・ジャンル:コメディ
・時間:81分
・出演:オーウェン・ウィルソン、サラ・フォスター、モーガン・フリーマン、チャーリー・シーン他
この映画、非常に評判が悪いんですよね…。映画評論サイトでもTwitterでも、とにかくコテンパンに貶されています。
私自身も特に高く評価しているわけではなく、つい1か月半前には↓こんなツイートをしました。
『ビッグ・バウンス』はオーウェンの出演作としてはかなり小ぶりで印象が薄い。まずオーウェン演じるのがケチなこそ泥のジャックで、これがどうにも似合わない。ストーリーもまるで中身がなくて、オーウェンらしさが発揮できる隙もないのが残念。ただテンポはいいので、特に退屈もしないのは確か。 pic.twitter.com/wDAbH8Ifl5
— Jane|悪と戦う映画ブロガー (@Jane_Knowledge) 2022年8月21日
しかし、「ストーリーもまるで中身がなくて、オーウェンらしさが発揮できる隙もない」と書いたのは我ながら的外れだったと後悔しています。
コメディタッチで軽やかながら、人間の在り方をかなり痛烈に描いた、なかなか興味深い作品だと気づいたのです。
少なくとも、『ミッドナイト・イン・パリ』よりはずっと中身のある映画です。
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『ビッグ・バウンス』に関しても書きたいことはいろいろあります。今回はまず、
・あらすじ
・どこで観ることができるか?
・一般的な作品評価
について、まとめます。
🏝あらすじと登場人物🏝
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
次回からはストーリー考察をしていきますが、ここでは重要な核心には触れずにご紹介しますね。
あらすじ
常夏のハワイ。成金富豪のリッチーはリゾートホテルを建てようとして、原住民たちの怒りを買っている。貧しい流れ者のジャックが原住民を庇って建設工事員とトラブルになり、ジャックは逮捕されてしまう。
釈放されたジャックは、リッチーのそばにいるブロンド美女と目が合う。ケチなごろつきのフランクはジャックに金をせびり、無理やり盗みを働かせる。フランクがジャックに集るのはいつものことだった。
テラスでジャックがビールを飲んでいると、ハワイの治安判事ウォルターから仕事の話を持ちかけられる。ウォルターが経営する現地のバンガローで雑用しないか、というのだ。バンガローはかなり繁栄していたため、ウォルターはリッチーのホテルが建つことを不満に思っていた。
ジャックはバンガローで働き始め、また例のブロンド美女を見かけて気になり始める。彼女の名はナンシー。リッチーの愛人だった。ウォルターによれば、バカにならない女詐欺師らしい。
しかし、ジャックはナンシーに会いに行き、意気投合する。ナンシーは、「リッチーの不正な賄賂金を盗んで、ホテルを建てられないようにしない?」と、ジャックに強盗計画を持ちかける。
ジャックは計画に乗るが、周囲の人間関係がどこかおかしいことに気づく…。
登場人物(キャスト)
かなり登場人物は多いですが、ここでは特に目立つ5人だけを。
ジャック(オーウェン・ウィルソン)
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
若い流れ者。盗みや詐欺の前科があるが、心根は優しく、意外に正義感もある。
ナンシー(サラ・フォスター)
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
成金富豪リッチーの愛人。女詐欺師の噂がある。
ウォルター(モーガン・フリーマン)
ハワイの治安判事。現地に大規模なバンガローを持っているため、リッチーのホテルが建つことが不満。
ボブ(チャーリー・シーン)
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
リッチーの部下。空威張りする頼りない男。
フランク(グレゴリー・スパーレダー)
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ケチなごろつき。いつも何か口実を設けてはジャックからお金を搾り取ろうとする。
🏝『ビッグ・バウンス』を配信しているのはどこ?🏝
現在、『ビッグ・バウンス』を配信しているサービスはU-NEXTのみです(2022年10月時点)。
でも、メイキングやインタビューも楽しむならDVDをおすすめします。
🏝なぜ異常に低評価なのか🏝
Photo by ©︎Warner Bros.LLC
レビューを見てみると、本作の評価はコテンパン! 中でも日本人は口汚く罵っています。欧米人はまだマシな評価する人も多く、Amazonレビューの総合評価は☆4.2。高評価はたいてい欧米人です。
日本人は「ストーリーが理解できない」?
日本人は近年どんどん読解力や理解力が落ちています*1。『ビッグ・バウンス』を貶すのは、理解力の低下と関係があるのかもしれません。
こう言うのは、否定的レビューの大半が「理解できない」の理由で占められていたからです。
1つ引用しましょう。
詐欺師の物語。
モーフリが出てたから見たけど…
ストーリーは微妙。
というか薄い。
というか、ラストの展開が早すぎて
着いていけなかった。
それまでは何だったの?
(Filmarksより)
この手のレビューが目白押し! こういうのを読むと、「理解力がそうとう悪いか、まともに観ないで書いているのでは?」と疑いたくなります。
ストーリーは登場人物の口を通して、完璧すぎるまでに語られています。私だって「内容が薄っぺら」とは感じたけど、ちゃんと物語は理解できます。
この映画の物語が難しいなら、大半の映画はまともに観れていないだろうと思いますね。
辛辣で悪いけど、低脳レビューの多さに呆れました。
外国での評価は五分五分
この映画の評価は欧米でもあまり高くはありませんが、理由は日本人とは違います。欧米人には「物語が理解できない」という低脳なレビューは見当たりませんでした。
欧米人の批判は、「クライムコメディと銘打っているのに、それらしくない」ところに向けられています。
しかし、素直に「面白かった!」と評価する人も多く、評価は中位です。
バランスを取るため、好意的なレビューを1つお見せしましょう。
これの何が悪いのか分かりません。コテンパンに貶すレビューも多いですが、鵜呑みにするのは危険ですよ。確かにアカデミー級の映画とは程遠いけど、主演はオーウェン・ウィルソン! それだけでも観る価値ありです。充分に面白い映画でしたよ。コメディ好きなら、観ないのはもったいないですね。
(iMDbの英語レビューを翻訳 )
🏝世の悪人にとっては本作の痛烈なアイロニーが怖い?🏝
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明るい常夏のハワイで進むテンポのいいストーリー。しかし、この映画の放つアイロニーの毒はなかなか強烈です。
警官の汚職、成金男の賄賂、正当な権利の侵害、嘘ばかり書き連ねた訴状…。こうした不正を軽いタッチでどんどん画面上に見せつけていきます。
出てくる登場人物の心の汚さが時間を追うごとに浮き彫りになり、ついには一見ケチな泥棒に見えるジャックが最も良心的であるのが判明する有様。
人間は痛いところを突かれると反撃に出る習性があります。極度に口汚く『ビッグ・バウンス』を罵る人たちは「すねに傷を持っている」のかもしれません…。この映画では公的機関や有力者の不正が容赦なく描かれますから。
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