ウェス・アンダーソンやベン・スティラー、オーウェンの自殺未遂にショックを受けた人々
オーウェンの自殺未遂を読み解くシリーズの第3弾。第1回ではオーウェンの悩み多い心理状態を、2回目の配信では自殺未遂の現場がどうであったかお話ししましたね。
☘️これまでの記事☘️
☘️オーウェンの自殺未遂にコメントを寄せた人々☘️
この事件は誰にとってもショッキングでした。俳優仲間から一般人まで、あらゆる人々がオーウェンに同情し、コメントを寄せました。
最終回の今日は、オーウェンが自殺を図ったことを、周囲がどう受け止めていたか、ご紹介しましょう。
隣人や宅配便の配送人
※イメージ画像
近所に住む人は、職場以上にその人の人柄を知っている場合があるもの。オーウェンの場合もそうで、メディアや映画でプレイボーイとして知られるのをよそに、隣人たちは彼を「真面目な、きちんとした男性」と見ていました。
「彼(オーウェン)のことは誰もが好きよ。本当に親切だし、およそ間違ったことは何一つしない。バカみたいなパーティでどんちゃん騒ぎすることもないし、トラブルなんか起こしたこともないんだから」と、隣人の1人ベティー・ミラーは語っています。
それだけに、オーウェンの家の前に警察と救急車が駆けつけた時、隣人たちは本当にびっくりしたそう。
「日曜日の真昼にいきなり、警察や救急車がドヤドヤとオーウェンの前についてさ、見てたら担架に誰かを載せて運び出してるじゃないか! ホントにぎょっとしたよ」と、別の隣人は話していました。
※イメージ画像
オーウェンが生死の境を彷徨っていることを聞いて衝撃を受けた人物の中には、宅配便の配送員まで混ざっていました。
「オーウェンは本当に優しくて、いつも公平な人だった。私たちもあの家に配送するのは大好きだったんだよ。気持ちよく接してくれるから」。
ベン・スティラー
Photo by Cinema
友だちである一方で、オーウェンの才能に妬いて意地悪をすることもあったベン・スティラー(👉ベン・スティラー、オーウェンに嫉妬?―映画『ズーランダー』解説①)。
しかし、さすがの彼もこの事件には動揺しています。
「ショックだったよ。オーウェンみたいにいいやつはいないのに。優しくて、思いやりがあって、あんな素晴らしい男がどこにいる? 早くよくなってほしい」と、コメントしました。
いつになく、賛辞の言葉を惜しみなく浴びせていますね。ベンも本当はオーウェンが大好きですから、この発言こそ本心だったと思います。
あいにく、オーウェンが無事スクリーンにカムバックすると、またまた妬み始めましたが・・・。
ちなみに、当時ベンは『トロピック・サンダー』を製作中。この作品にはオーウェンも出演予定でしたが、自殺未遂のため降板してしまいます。
Photo by DreamWorks Pictures, wikipedia
オーウェンが演じるはずだった役はリック・ペック。私は未見なので分からないのですが、調べてみるとベン演じる主人公の親友兼エージェントの役のようです。
結果的に代役として、マシュー・マコノヒーが出演することになりました。
ウェス・アンダーソン
Photo by goodreads
独特の世界観で知られるウェス・アンダーソンは、オーウェンの映画仲間の中で最も古くからの付き合い。
事件の直前には、オーウェンを主役に据えて『ダージリン急行』を撮っていたばかりでした。
事件の数日後、オーウェンがずいぶん回復しているのを見て、ウェスはホッとしたようですが、オーウェンが「無理に冗談を言おうとしていた」ことをとても心配していました。
さらに、あれこれ知りたがる記者に対しては「あまりうるさく詮索しないでくれ。オーウェンはすっかり参ってるんだから。彼がいつか話したいと思った時に聞いてあげればいいことじゃないか」と釘を差して、親友を世間の好奇心から守る姿勢を見せています。
ケイト・ハドソン
Photo by Celeblity-events
半分ストーカーじゃないかと思うほどオーウェンを追い回したケイト・ハドソンも、事件の知らせには大変慌てました。「オーウェンは本当に素晴らしい男性なの。私は彼を心から愛しているのよ!」と泣きながら言ったそうです。
それはそうでしょうね・・・。彼女が本気でオーウェンを好きだったのは間違いないですし・・・。もっとも、「これから私がサポートするわ!」とか言って、またオーウェンを追いかけたのは余計ですけどね。
その他の人々
記者のエミー・ライアンは、「私がオーウェンに会ったのはたった一回、『ライフ・アクアティック』のインタビューをした時です。オーウェンはとても親切でチャーミングだったけど、ものすごく真面目で、考えすぎるタイプでした。オーウェンは決して映画で見る通りじゃないんです」と書き、演じるキャラクターのイメージだけでオーウェンを知ったつもりになっている観客に警鐘を鳴らしました。
オーウェンと親交のあった、ある映画プロデューサーは「彼はまるで天使なんだ。いつも人のことを気遣って、優しくて。それなのに、自分の心の中は悲しみでいっぱいだったんだね」と、嘆いています。
それにしても、大勢がオーウェンにこれほどの惜しみない賛辞を浴びせていることに驚きを感じませんか? 死にかけている者が悪口を言われることは滅多にないとはいえ、「天使」とか「あんな素晴らしい人はいない」などと讃えられる人がどれくらいいるでしょうか。
☘️運が悪ければ最後の映画になったかもしれない、『ダージリン急行』☘️
Photo by Searchlight Pictures, rushmore
事件直前までオーウェンが演じていたのは、奇しくも自殺未遂から復帰した男の役でした。
もし、あのまま死んでしまっていたとしたら、『ダージリン急行』の⬆️包帯だらけの姿がオーウェンの見納めになってしまったかもしれません。
ウェス・アンダーソン、公開をためらう
Photo by Yahoo
オーウェンが自殺を図った時、『ダージリン急行』はすっかり完成していましたが、ウェスはしばらく公開を延期するかどうか迷っていました。
無事に命を永らえたとはいえ、依然として精神の不安定さを見せるオーウェンのことが心配でならなかったようです。
しかし、オーウェンが映画の公開を止めないように進言したことで決心し、予定通り公開に踏み切りました。
「オーウェンは映画の公開を遠慮しないように、と言ってくれているし、楽しみにもしているようだから、延期せずに上映しよう」と、ウェスは発表しました。
オーウェンの気持ちを考え、映画公開の延期も考えるなんて、ウェスは優しい友達ですね。
オーウェン、プレミアにサプライズ登場!
2007年10月4日『ダージリン急行』のプレミアが行われた時、レッドカーペットにオーウェンの姿はありませんでした。
左からジェイソン・シュワルツマン、ウェス・アンダーソン、エイドリアン・ブロディ、アンジェリカ・ヒューストン
しかし、全員がステージに上がった時、ウェスが「私の大親友を」と言って、後ろからオーウェンを連れてきます。自殺を図って以後初めて公の場に出た時でした。観客がどんなに湧いたか、想像がつくでしょう?
まだ大勢のファンに取り囲まれても耐えられるほどには回復していなかったオーウェンですが、ウェスや共演者から「裏口から入って、ステージにいる僕たちと合流するだけでいいから」と説得されて行くことにしたよう。
ウェスは「彼がいなくなってしまったら、私は2度と映画を作らなかったでしょう。これから先もそんな悲しい時が訪れないよう切に願っています」とスピーチして、どれほどオーウェンを大切に思っているかアピールしました。
左から2番目がオーウェン
共演者たちもオーウェンが出席したことに大喜び。
アンジェリカ・ヒューストンはプレミアのあとで「ビッグニュースよ! オーウェンに会えたの!」と周囲に言って回るし、ジェイソン・シュワルツマンは「オーウェンはまだまだ辛いだろうに、よく来てくれたよ。大好きだ」と、感激しています。
当のオーウェンはというと、精いっぱい頑張って観客に手を振ってみせ、エイドリアン・ブロディが着ている光沢のあるシルバースーツを見て「カッコいいね。よく似合ってるよ」と褒めたり、相変わらずの気遣いと優しさを滲ませていました。
ただ、この状況下でこんなキラキラした恰好をするなんて、エイドリアン・ブロディさん、ちょっと・・・。まだ精神的に疲れている共演者を迎えるのにふさわしい服装とは思えません。
☘️しかしオーウェンの苦悩は続く・・・☘️
こうして何とか命永らえたオーウェンですが、根本的な苦しみはその後も彼の心に暗い影を落としています。
2007年の自殺未遂から既に13年が過ぎましたが、その間にもオーウェンが死を望んだことは数え切れないほどあったよう・・・。
事件から2年後の『ミート・ザ・ペアレンツ3』の撮影中にも、発作的な自殺願望に襲われたようで、共演のロバート・デ・ニーロが心配する様子がNGシーンに収められています。
でも、オーウェンは現在まだ52歳。現代の感覚ではまだ若いですよね? 彼の場合、見た目にもマイナス10歳してもいいくらいですし・・・。
オーウェンが近いうちに幸せになり、生きる意欲を取り戻すよう、皆で祈りましょう。