『ウェディング・クラッシャーズ』の舞台裏|あのシーンはこうして作られた!
『ウェディング・クラッシャーズ』にはオーウェンが思いついて挿入したシーンがたくさんあります。ラストのプロポーズシーンもそうですし、ジョンの心理描写シーンもすべてオーウェンのアイデア。
そもそもジョンという人物の性格そのものが、オーウェンが演じることで大幅に変更されています。
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Photo by ©New Line Cinema
・公開:2005年
・ジャンル:ロマンスコメディ、ドラマ
・時間:119分
・出演:オーウェン・ウィルソン、ヴィンス・ヴォーン、レイチェル・マクアダムス、ブラッドリー・クーパー、他
あらすじ・キャストは↓こちらをどうぞ。
今回は、作品そのものの考察というより、製作の裏話をメインにお話ししようと思います。
先にざっと内容を紹介すると、
・オーウェンが嫌がった、クリアリー夫人とのきわどいシーン
・トッドの描いたジェレミーの変な肖像
・オーウェンおすすめの愛らしいゲーム
念のために書いておくと、この映画でオーウェンが演じたのはジョン。以下、「ジョンは〜」とか「ジョンを〜」と書いているのは=オーウェンが演じた役、とお考えください。
💛お子様禁止! クリアリー夫人の誘惑💛
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『ウェディング・クラッシャーズ』はアメリカでは18禁の映画。その最大の理由になっていそうなのが、ジェーン・シーモア演じるクリアリー長官夫人がジョンに自分の胸を触らせるシーン。
クリアリー夫人はクレアの母。夫との関係はとうの昔に冷え切っていて、何を思ったかジョンに色目を使いだします。あげくにはジョンが部屋に1人でいるところを狙い、自分の胸を触るように強要する始末。
ジョンは恋する人の母親なので邪険にもできず、本当に困りきってしまうのが問題のシーンです。
オーウェンはとにかく嫌がった
オーウェンはすっかり神経質になってしまい、相当イヤな思いをしました。とにかくこのシーンではコチコチになってしまったらしく、一度はNGを出してしまっています。
ヴィンスから「彼女(ジェーン・シーモア)の胸を触るの、ワクワクした?」と聞かれて、オーウェンはこう答えています。
オーウェン:朝から楽しみで仕方なかったと言いたいところだけど、実際は違うんだ。とにかく気まずくて・・・。だって、50人以上のスタッフが見ている前で、彼女の胸を触らないといけなかったんだよ!
おまけに僕は彼女の家族とも知り合いだし、トラブルになりはしないか心配でたまらなかった。まあ、そんなことはなくて済んだけど・・・やっぱり・・・。
このブログの読者さんなら耳にタコができるほどになっていると思いますが、彼はとにかく生真面目でお堅い性格。映画だから割り切る、ということができない性分なのです。
自尊心をかき集めて僅かな変更を加える
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かわいそうに、身の置き場がないほど恥ずかしい状況に追い込まれてしまったオーウェン。しかし、それでも自分が演じるジョンに不倫疑惑がかからないよう、シーンに小さな変更を加えています。
オリジナルの脚本では、ジョンに胸を触らせた夫人は図に乗って彼に抱きつき、そこでこのシーンが終わる予定でした。
しかし、これではカメラが切れたあと2人が何をしていたか不透明で、怪しむ観客も出てくるはず。
そこでオーウェンは、夫人が自分から部屋を出ていくように変えてしまいました。
夫人は「あなたって、イヤらしいお方」と訳のわからないことを言って去っていきます。確かに、こうすればジョンの身の潔白は疑われずに済みますよね?
オーウェンがボロボロにされた自尊心をかき集めて、何とか名誉を守り抜いた印象で、微笑ましい感じもします。
ジェーン・シーモア本人はこのシーンを面白がっていた
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では、触られる側のジェーン・シーモアはどんな気分だったのでしょう? 普通なら、半裸にさせられる彼女のほうがもっと恥ずかしいはずですよね?
しかし、意外にもジェーン本人は何とも思っていなかったようです。
ジェーン:私はこのシーンをオーディションでやったの。あの表情と仕草は私が思うままに演じたのよ。
オーウェンはどうもかなり緊張しちゃったみたいね。私の胸に手を置いて、「どう思う? 大丈夫?」とでも言いたげに見上げてくるから、私、言ってあげたのよ。「ジェーン・シーモア本人として触るなら問題だけど、キティー・キャット(クリアリー夫人の愛称)としてなら平気よ」ってね。
これはむしろノッている感じさえあります。
ジェーン・シーモアは若い時には『007/死ぬのは奴らだ』で、官能的なボンドガール(特に露出してはないらしい)を演じ、かなりきわどいポートレート写真を何枚も残したりしているので、脱ぐことにあまり抵抗はないのかもしれませんね。
オーウェンは女性のヌードシーンに同情的
オーウェンはヌードシーンを撮る羽目になった女性にはいつも同情的。『クラッシャーズ』はジェーン・シーモアのこのシーンだけでなく、端役の女の子たちもヌードを見せるので、オーウェンは気の毒がっていました。
オーウェン:あの女の子たちもかわいそうに。映るのはたった数秒なのに、撮影の時は何テイクも取るから、すごく時間がかかったんだ。とても恥ずかしかったと思うよ・・・。
どうでしょうね? 意外とヌードを自慢する女性も多いから、オーウェンの心配は杞憂だったかも。
思えば、男性のオーウェンは人前で肌を露出することにものすごい抵抗があるのに、本来ならもっと気にするべき女性が無頓着なのは驚きですよね。
男女関わらず、現代人にはオーウェンを見習って、慎みを意識してほしいものです。
💛トッドの絵についてのオーウェンの助言💛
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クリアリー家に泊まった最初の夜、ジェレミーはゲイの気があるトッドに関係を迫られて迷惑します。画家でもあるトッドは描き上げたばかりのジェレミーの絵を見せて愛情を示しますが、この絵は何とオーウェンの提案!
最初からトッドがジェレミーの肖像を描く設定はありましたが、パッと見ただけでは分からない、抽象的な作品になるはずでした。
しかし、オーウェンは「どうせ描くならはっきりヴィンスと分かる絵のほうが面白いよ」と、ダイレクトな肖像画を提案。
結果は大成功で、大爆笑だったようです。
正体がバレて屋敷を追い出される時、ジェレミーがちゃっかりこの絵を持って出るのを見てジョンが呆れ顔になるのもオーウェンのアドリブ。
クレアに誤解されて失意のどん底にも関わらず、ジョンがちゃんと奇妙な絵に気づくところが面白いです。
💛オーウェンお墨付きの手合わせゲーム💛
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ビーチでやっと2人きりになれたジョンとクレア。静かに心を通い合わせるうちに、手合わせゲームを始めます。
互いの手を合わせ、相手の手を軽く叩いては自分が叩かれないように逃げる単純なゲームですが、これをしたがったのはオーウェン。ビーチのシーンでぜひこのゲームをして、クレアと親密になっていく様子を描きたかったようてす。
オーウェンは現実でもこのゲームをする?
オーウェン:このゲームはとてもいいんだよ。相手に触れることができるだろう? 恋人との距離を縮めるのにピッタリなんだ。
音声解説でオーウェンはヴィンスにこう話していましたが、恋人に愛を打ち明ける時のオススメとでも言わんばかりの口調。子どもみたいに無邪気で可愛いですね・・・。
もしかして、オーウェンは恋する女性にこんなゲームを持ちかけるんでしょうか? まあ、彼がしたら愛らしいけど、でもヴィンス・ヴォーンはどうでしょうね? ヴィンスが「手を出してみて」とか言ったらちょっと・・・。まあ、まず真似しなかったと思いますけど。
やっぱりオーウェンって、発想が愛らしく純真ですね。彼の大きな魅力の1つです。
物語の上でもゲームが重要な役割を果たすことに
映画の中でこのゲームをしたいとオーウェンが言った時、クレア役のレイチェルは初め渋って嫌がりました。彼女の感覚ではあまりに子供っぽく思えたのでしょう。
しかし、オーウェンが諦めようとした翌日、彼女は急に考えを変え、「やっぱりあのゲームをしましょうよ」と言い出したそう。がっかりするオーウェンのことがかわいそうになったのでしょうか?
いずれにしても、このゲームは映画でかなり効果を上げています。
オーウェンの狙い通り、2人の心の絆を感じさせる場面に仕上がっているうえに、重要な伏線の役割まで果たしているのです。
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数か月後、ジョンと音信不通になり、嫌々ながらサックとの結婚の準備を進めるシーンで、クレアはふとこのゲームのことを思い出します。
クレア:ねえ、手を出してみて。
サック:今はちょっと・・・
クレア:お願い!
(サックはいかにもうんざりしたように腕時計にちらりと目を走らせ、両手を出す。クレアは軽く彼の手を叩くが、サックは反応なし。)
クレア:ちゃんと手を動かしてよ。
サック:うるさい女だな!
このひどい言い方を聞いて、クレアはますます落ち込み、サックとの結婚に疑問を深めていきます。
オーウェンが思いついたゲームがクレアの心理状態の描写にも役立つことになって、とても印象的な出来上がりになっていますね。
💛製作過程でオーウェンが果たした役割は大きい💛
もともと脚本家からスタートしたオーウェンはやはり映画作りにとても秀でています。『ウェディング・クラッシャーズ』でも、主人公の性格を【大改造】し、小道具に目を配り、脚本にないシーンを大幅に追加し・・・と大活躍!
クリアリー夫人の誘惑シーンのように、必ずしも意に沿わない設定でもできるかぎり道徳的に処理したりして、オーウェンの真面目な性格が伺えます。
正直に言って、『ウェディング・クラッシャーズ』のオリジナル脚本には何の感動もありません。あのまま製作されていたら、観客はちょっと笑ってすぐに忘れたでしょう。
この映画がアメリカで大ヒットしたのは、一重にも二重にもオーウェンの優れたアイデアのおかげだったと思います。