【キャラクター考察】映画『アー・ユー・ヒア』スティーブの不幸な過去
マイナーだけど奥の深い映画《Are you here》の主役はやはりスティーブ（オーウェン・ウィルソン）。
この映画はスティーブの視点で描かれ、スティーブの考えでストーリーが進み、そしてスティーブの愛で終わります。
Photo by ©Gilbert Films
作品情報
・公開：２０１３年
・時間︰１１４分
・出演：オーウェン・ウィルソン、ザック・ガリフィアナキス、ローラ・ラムジー、エイミー・ポーラー、他
・ジャンル：なし（ロマンス、サスペンス、ドラマの融合）
このまえ書いたように、この映画の善良なキャラクターは、スティーブ（オーウェン）とベン（ザック・ガリフィアナキス）。
アンジェラ（ローラ・ラムジー）も善の仲間に加えていいかもしれませんね。犯罪の手先に使われたのは事実ですが、彼女自身は善良ですから。
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さて、ベンは本編を通して生い立ち・感情がハッキリと描かれていますが、一方のスティーブは不幸な雰囲気は伝わってきても、背景はあまり見えてきません。
しかし、そこはミステリアスな映画らしく、ヒントは本編のあちこちに隠れています。ぜひ一緒に探してみましょう！
この記事で分かること
☑ スティーブは犯罪集団のターゲットにされている
☑ 不自然な形で両親と引き離された
☑ 誤解によって失恋した経験がある
この映画には、スティーブの味わった不幸はすべて犯罪集団のせいであることをほのめかす描写があちこちに隠されています。
この映画はAmazonプライムのみの配信です。TSUTAYAやゲオで借りることはできません。
🌿スティーブの生い立ち🌿
Photo by ©Gilbert Films
スティーブはとても善良で温かみのある性格。９割が悪人のストーリーの中で、彼はひとり清楚なオーラで輝いています。
ワイナー監督：この映画はスティーブの視点から作られているんだ。彼はどこか儚いところがある。観客はスティーブに肩入れしながら鑑賞する。時には彼のおとなしさに地団駄を踏みたくなるだろうがね。
インタビューで監督はスティーブについて、こう言い表していました。
確かにスティーブには儚い雰囲気はありますね。「おとなしさに地団駄を踏みたくなる」というのもそのとおり！ スティーブはあまりにも善良で優しいので、観ているほうがもどかしくなるところがあります。
スティーブは何歳？
Photo by ©Gilbert Films
これは簡単。スティーブはベンと同級生で、小学６年生の時から仲がいいという設定になっています。ベンの姉テリーは２人の友情を「２５年来の付き合い」と言うので、計算がラクです。６年生は１１歳くらいですから、
１１＋２５＝３６
３６歳ですね。スティーブもベンもまだかなり若いのです。
ちなみにスティーブを演じた時のオーウェンは４５歳。初々しいので、スティーブと同じかそれより若く感じますね。
両親と引き離された？
ベンの家族が明確に描かれるのに対し、スティーブの家族の存在は謎。しかし、１箇所だけスティーブが両親のことを口にするシーンがあります。
Photo by James Bridges – © You Are Here Films, LLC.
スティーブがベンを葬式に連れて行ってやるドライブの途中の会話です。
スティーブ：僕は両親が亡くなってからは家に帰ってないよ。
ベン：おまえの親御さんは死んでないだろ？
スティーブ：うーん、そうだね・・・。でも、両親は引っ越していった後は・・・。
見落としそうな会話ですが、ここは重要なポイント。スティーブには両親の生死が分かっていません。
スティーブの両親は、犯罪のターゲットになってしまったのかもしれません。
🌿スティーブは犯罪の餌食に🌿
Photo by ©Gilbert Films
上等そうなスーツ、スポーツカー。スティーブには資産家の雰囲気が漂っています。しかもまだ若くてハンサム。犯罪集団から狙われる特徴が完璧に揃っていますね。
事実、映画の描写を見ていると、彼は財産を搾り取られ、家族を失い、失恋まで味わう羽目になったようです。
クレジットカード使い込みの被害
スティーブは不健康な生活とはいえ、だらしなくはありません。遅刻が多いのは夜中にしょっちゅうベンの相手をして疲れているからだし、金欠もベンを養っていては足りなくなって当然。
が、金欠に関してはもっと深刻な問題がありそう･･･。
冒頭、スティーブはどのカードを使ってもエラーになります。１枚目の時は「磁気不良かな」とつぶやきますが、２枚めのエラーにはさすがにびっくり！
スティーブはクレジットカードを不正利用されているのです。
スティーブの家に訪ねてきていた女は「こっちのカードもダメ。使えないわ」と、彼のカードをひらひらさせていますが、これなら簡単にセキュリティコードだって盗めますよね？
犯罪集団は富豪の遺産も狙いますが、ターゲットの人物が生きていても、使えるものなら何でも盗みます。
ちなみに、女性たちが画面に現れてもスティーブが少しも女遊びをしているように見えない理由は、↓こちらの記事で書いています。
ひと言で表すなら、例によってオーウェン自身から滲み出る真面目そうなオーラのおかげなんですよね。
恋の痛手
Photo by ©Gilbert Films
スティーブの過去の恋愛について、映画には何も出てきません。しかし、スティーブがアンジェラに愛の告白をした時、アンジェラはふとこんなことを言います。
アンジェラ：あなたはこの１０年間、誰ともまともに交際してなかったでしょ？ あなたは１０年前に何かで急にどん底に転がり落ちたんだわ。その傷をチャーミングな微笑みの下に隠して、愛想よく振る舞っているだけ。
アンジェラがスティーブの過去を知っているのは、もちろんスティーブを見張っている犯罪組織から話を聞いているからです。
つまり、スティーブは映画が始まる１０年前までは真剣な交際をしていたことになりますね。その後「どん底に転がり落ちた」なら、何か恋愛のトラブルがあったと考えるのが自然。
スティーブと恋人は誤解するように仕向けられ、別れを余儀なくされたのではないかと想像できます。スティーブは「彼女から理不尽に捨てられた」と思い込み、傷心から生活が乱れていったのかもしれません。
スティーブはいつもどこか寂しげですが、それは両親が不自然に失踪した悲しみや失恋の痛手が癒えていないせいでしょう。
🌿スティーブは悪人だらけの世界で必死に生きている🌿
このまえの記事で解説したように、《Are you here》のバックに描かれる犯罪は、２０１８年から世界中で起きていることです。
スティーブは犯罪集団の圧力を受け、搾り取られていく存在。彼がストーリーの中で味わった、
・クレジットカードの使い込み
・誤解による人間関係の不和
・集団ストーカーに行動を逐一見張られる
などは、現実でも数多くの人たちが被害に遭っています。
しかし、この映画のポイントは「スティーブが騙されたままでは終わらない」こと。彼は『マイナスマン』のヴァンと同様、自分を包囲する網をかいくぐり、犯罪を滅亡させるのに成功します。
さらに素敵なのは、スティーブが犯罪の手先に使われていたアンジェラを改心させ、彼女と結ばれることです。
あのラストシーンの美しさは･･･、これについては↓こちらの記事で解説していますので、併せてどうぞ。
この映画はAmazonプライムのみの配信です。TSUTAYAやゲオで借りることはできません。
《Are you here》解説
４．主人公スティーブの過去（本記事）
