オーウェン・ウィルソンの映画と性格

オーウェン・ウィルソン|知られざる性格をすべて公開!

『ナイト・ミュージアム』のカウボーイや『アルマゲドン』のオスカー、『カーズ』の主役の声を担当するなど、有名作品に数多く出演している、ハリウッドの人気俳優オーウェン・ウィルソン。そんな彼の真の姿について伝えるブログです。

善悪を揺れるヒロイン|2.映画《Are you here》キャラクター考察①

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※筆者の考察ミスのため、1/28に大幅にリライトしました。


 先日あらすじをご紹介した《Are you here》。しかし、この映画の真のテーマはストーリーを紹介するだけでは足りません

 ワイナー監督はスクリーンの中にセリフで語られないヒントを多く忍ばせ、観客に探させます。何度も観てやっと気づくものもあるし、「1度観て終わり」ではもったいない映画。

 私も記事を書きながら4度目の鑑賞をして、考えが完全にひっくり返った部分もありました…

 

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 この映画の隠れたテーマは「金銭欲と愛の対立」。お金のためなら殺人も厭わない悪のコミュニティがバックにあり、主人公のスティーブ(オーウェン)は純真な愛情でこれに立ち向かいます

オーウェン・ウィルソン

スティーブ(オーウェン)

Photo by ©Gilbert Films

 作品を解説するには、スクリーンのヒントを拾いながら、まず登場人物を善と悪に分けなければなりません

 結論を先に言うと、完全な善人はスティーブ(オーウェン)とベン(ザック・ガリフィアナキス)だけ

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スティーブ(左)とベン

Photo by ©Gilbert Films, berlinere

 端役のレッドもシロと思いますが、残りはほぼ犯罪者

 ただしスティーブの恋人役となるヒロイン、アンジェラだけは善悪の中間的な存在です。今回は彼女にスポットを当てて、観察してみましょう。

 

🌿アンジェラは悪であり善でもある🌿

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アンジェラ(ローラ・ラムジー)

Photo by ©Gilbert Films, fanpop

 ベンの父サムの未亡人アンジェラ(ローラ・ラムジー)。彼女は悪のコミュニティの手先です。サムと結婚したのは、遺産を狙う強欲なテリー(エイミー・ポーラー)とテリーが属する犯罪集団の命令。つまり、アンジェラはサムを殺した実行犯です。

 しかし彼女にはまだ良心も残っていて、善悪混ざったところがあります。

1.汚れた鏡とマルチカラーのドレス

 アンジェラの善悪の混在をハッキリと観客に示すのが

 彼女はまめまめしく家事をこなす女性で、料理・掃除・洗濯など、何でもキチンとしています。が、食器を洗う彼女を映し出す鏡は曇って汚れています

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Photo by ©Gilbert Films, fzmovies

 アンジェラの性質に悪が潜んでいることの象徴ですね。

 いっぽうで、もっと細かく見ると、この鏡はまだ完全に曇ってはいません。クリアに映し出せる面も残っていて、彼女の心が完全には濁りきっていないことも示しています。

 象徴性を大切にする本作では、服装も見逃せないヒント。洗い物をするアンジェラが着ているのは、何色もの糸が織り合わされた細かいチェック柄のドレスです。

マルチカラー=複雑

細かいチェック柄=自信がない

 このシーンでアンジェラは恋い焦がれるスティーブにどっちつかずの態度をとり、少し後にベンと一夜を過ごしてしまいます。

 半分汚れた鏡とマルチカラーのドレスは、彼女の心に迷いがある証

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Photo by ©Gilbert Films

 アンジェラは犯罪集団に従わないといけない立場ながら、純真なスティーブの愛に惹かれていて、ジレンマに陥っています

2.純白のドレスとブルドーザーの音

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Photo by ©Gilbert Films, LAtimes

 夫サムの葬儀で白いドレスをまとって佇むアンジェラ。ここが彼女の初登場ですが、セリフはありません。

 しかし、アンジェラの立場を浮かび上がらせる非常に重要シーンです。

 葬儀にネグリジェのような白いドレスを着ていることにはびっくりしますが、これは彼女の純潔さの象徴

 参列者が去った後も、彼女はひとり残り、一掴みの土に口づけして墓に撒きます。すると、突然アンジェラの背後からブルドーザーの音! 彼女はギョッとしたように振り返り、警戒の色を浮かべます。

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ブルドーザーの音に怯えるアンジェラ

Photo by ©Gilbert Films

 おそらく、このブルドーザーはアンジェラへの脅しでしょう。夫殺しの罪に怯える彼女に「言うことを聞かないと、バラバラにして殺すぞ」と警告を発しているわけです。

 ちなみに、このブルドーザーなどの作業車による脅しは’19〜’21年、帯広でも多発していました。オーウェンが殺されかけた、あの頃のことです。

 

・関連記事➡オーウェンが帯広で殺害されかけた事件

3.「この世には善人だっているのよ!」

 テリーの侮辱に耐えかねて叫ぶアンジェラのセリフ。基本的におとなしいアンジェラが映画中、最も激昂するシーンです。

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強欲なテリー(エイミー・ポーラー)

Photo by ©Gilbert Films

 テリーとアンジェラの関係性が読み取れるところで、それぞれの考え方も浮き彫りになります。

 ちょっと長いですが、会話を見てみましょう。

テリー:あんたは新米なのよ。それを采配ふって、余計なことばかりして!(中略)父のビジネスを縮小させて、「もっとゆっくりしなきゃ。人生はまだまだ楽しめるのよ」とか言ってさ。年寄りにヨガやギターを習わせるなんて、愚の骨頂よ。

アンジェラ:学ぶのに遅すぎることはないわ!

テリー:あんたこそ少しは学びなさい!あんたは必要な男のところに行って、役目をこなすだけのロボットなのよ。

アンジェラ:そんなのイヤ。もうしたくないわ!

テリー:どうせ偽善者だらけだから平気よ。

アンジェラ:世の中には善人だっているわ!

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激昂するアンジェラ

Photo by ©Gilbert Films

 2人とも早口でまくし立てるので、字幕では核心が掴めないところもあるのですが、こうしてみるとアンジェラはテリーに利用されているだけ。アンジェラは手先に使われながらも、強い反発心を抱いていることが分かりますね。

 アンジェラは同じシーンの始め、店の女主人と話している時には「ずっとこんなじゃないわよね?」と不安げに聞いていて、良心が痛んでいる様子を見せています。あいにく、この女主人はテリーとグルみたいですが・・・。

女主人:バカね、アンジェラ。あんな老人と結婚したのは、理由あってのことだったでしょ。今度は若い男にしたらいいわ。

 実はアンジェラはサムと5年間結婚生活を送っています。遺産目当てに結婚したわりには、なかなか長い年月です。

 彼女は殺害のために送り込まれたにも関わらず、老人のサムを大事にし、何とか殺さずに済ませようと時間稼ぎをしていた節があります。強欲なテリーはこれが気に入らなかったようですが・・・。

4.遺産を継がないのはなぜか?

 これはアンジェラの防衛か作戦か、判別のつきにくいところです。遺産を取らないことで、彼女は万一の場合にも殺人の罪から逃れられます

 もともとサムを殺したくなかった彼女の心境を考えれば、防衛のつもりで遺産を断った可能性もありますね。いっぽうで後々ベンを狙うつもりがあるのなら、ここで疑いをそらしておく作戦だったとも思えます。

 このあたりの解釈は難しいですね…。

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Photo by ©Gilbert Films, slate

 テリーは「義母に全部取られるかもしれない」と騒いだわりには、アンジェラが何も受け取らないことが分かっても喜びません。それどころか「(遺産を取らないのは)何かウラがあるのよ」と言い募り、愚直な夫レッドを呆れさせます。

 あるいは、テリーは万一サムの死因がバレた時のことを懸念したのかもしれませんね・・・。

5.恋とお金の選択に揺れる

 恋に落ちたスティーブは愛らしいしぐさでアンジェラを求めますが、彼女は思わせぶりな態度を取りつつ、やんわりと退けます。

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スティーブはアンジェラに想いを打ち明けるが…

Photo by ©Gilbert Films

 しかし、ストーリー後半になってアンジェラは観客を仰天させる行動に!

 何と、落ち込んでいるベンにキスをして、自分から身体を任せてしまうのです!

 この意図は金銭欲か、コミュニティの命令か、あるいはベンとの結婚で安定を望んだのか・・・。

 彼女が農場に愛着を持っているらしいことは言葉の端々から分かります。「普通の暮らしがしたい」とベンにも語っているので、犯罪組織から足を洗うきっかけにしたい気持ちもあったかもしれません。

 が、農場について彼女は見込み違いをしています

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Photo by ©Gilbert Films, fzmovies

 ベンは早い段階で、「家と広大な土地はスティーブに譲る」と決めていました。この会話はベンとスティーブの間だけで交わされ、アンジェラはこの取り決めを知りません。

 彼女がこのことを知るのは、スティーブを退け、ベンと情を交わしたあと。不動産を受け継ぐのがベンではなくスティーブと知ったアンジェラはショックを受けています。

 いずれにしても、アンジェラがベンと一夜を共にするのは軽率としか言いようがありませんね。

 事の次第を知ったスティーブがベンとアンジェラの両方に怒るのは当然です。

6.犯罪に囲まれた生い立ち?

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Photo by ©Gilbert Films

 電話でスティーブと会話した時、アンジェラはふいに「私の父は保険会社に勤めていたの。デスクで亡くなったわ。死に目には会えなかった」と話します。しかし、亡くなった年齢を聞かれると濁し、以後この話題には触れません

 アンジェラが急にこの話を持ち出すのは何か暗示的。スティーブの優しさに心を開いて、自分の犯罪に囲まれた環境を伝えたかったのかもしれません。

電話 映画

Photo by ©Gilbert Films

 さて、アンジェラはストーリーの最後にはどうなるのでしょう? 悪に転がり落ちるのか、善の道を進んでいくのか・・・

 ここは他のキャラクターとの関わり・様子も鑑みないと結論が出せないので、今回は保留。

 映画の悪人をピックアップし、次にスティーブの状況を観察したあと、映画のラストを解明するつもりです。

 

 この映画の解説はちょっと長くなりそう・・・。

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つづく➡

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