騙されないで、これは偽映画!− 『ブリス〜たどり着く世界』
今回はかなり長い記事になります。
先日、アマゾン・プライムでオーウェンが出演したとされる映画『ブリス〜たどり着く世界』が独占配信されました。
しかし、・・・!
これは偽物の可能性が高い!!
例によって、まず⬆️の写真が問題だらけ。よく見てくださいね。虫眼鏡をどうぞ。
まず、前面に立っているオーウェンとサルマ・ハエック(この映画でオーウェンの相手役を演じたらしい)の2人だけは解像度が高いのに、後ろは全部ボケています。背景もビーチだの、レジだの、合成し過ぎ! ヘリコプターか飛行機みたいな物体も見えるので、空港も混ざっているんでしょうか?
次にオーウェンの指に注目してください。リンゴを持っている状態で、親指がこんなに飛び出しますか? 右手の指も先が長すぎる上に、途中から質感が変わっていますよ。
偽物の証拠は写真だけ? いえいえ、上の写真なんか、まだほんの序の口です。本題はこれから。
1.『ブリス』は映画のタイトルとして多過ぎる!
この《Bliss》、実は同じタイトルで異常にたくさんの映画があるんです。Wikipediaで検索しても、↓これだけの数が出てきました。(タイトルをクリックすると、Wikipediaのページに飛びます。リンクがないものはページが存在していません。)
①Bliss (1917 film) , starring Harold Lloyd
②Bliss (1985 film) , directed by Ray Lawrence, adapted from the Peter Carey novel
③Bliss (1997 film) , starring Terence Stamp, Sheryl Lee and Craig Sheffer
④Bliss (2006 film), aka Fu Sheng, Chinese film produced by Fruit Chan
⑤Bliss (2007 film), aka Mutluluk, directed by Abdullah Oguz, adapted from the Zülfü Livaneli novel
⑥Bliss (2011 film), a biographical film about the early years of New Zealand author Katherine Mansfield
⑦Bliss (2017 film), a Philippine thriller film
⑧Bliss (2019 film) , a horror film written and directed by Joe Begos
⑨Bliss (2021 film) , a science fiction film written and directed by Mike Cahill
さすがに多すぎませんか? これだけあれば、適当にアレンジして新しい映画も作れそうです。
Wikipediaの情報を一応そのまま信用するなら、①は古い無声コメディー、②はオーストラリアのコメディー、③は夫婦の問題を描いたアメリカのエロティック・ロマンス、④は妻に逃げられた警察官を描く中国の映画、⑤は17歳の少女が追い詰められるトルコの映画、⑥は詳細不明ですが、ニュージーランドの制作のようです。⑦は事故で不自由な体になった女優が狂気に陥っていくフィリピンの映画、⑧はドラッグにハマっていくアーティストを描いたアメリカのホラー、⑨が今回のテーマとなる映画で、離婚と解雇の憂き目に遭った男が仮想世界に迷い込むSFです。
ちなみに、Blissは英語で《至福》。ただ、上記のうちのいくつかにはドラッグが登場するので、不健康な高揚感を意味することもあるようですね。
先に挙げた映画のすべてが本当に存在するかどうかは、私にも確かめようがありませんが、ここでのテーマはもちろん、⑨です。
さて、公開されたばかりの⑨《Bliss》。海外では早速レビューが飛び交っていますが、それをいくつか読んでみると・・・
「何が言いたいのかサッパリ分からない」
「いつものオーウェンと全然違う。動き方がどうも不規則な感じ。」
「これ本物? どこまでが嘘でどこからが本物か見分けがつかない。」
「普通あれだけの演技力を誇るオーウェンなのに、今回はまるで別人!」
「退屈。混乱するだけ。」
「音声におかしいところがあるし、映像がリアルじゃない。」
どうでしょう、これは? 特に紫の文字で強調した部分は、私の仮説を裏付けるものです。つまり・・・
これはディープフェイク映画!!
2.ディープフェイクって何?
これまでの記事でも触れたことがありますが、ここ数年流行りの偽造用技術です。ご存知ない方のために、ディープフェイクについて簡単にご説明しましょう。
例えば、人物Aの動画を、人物Bの動画に見せたいとします。すると、
・AとB、それぞれの動画を用意する
・Aの顔にBの顔を被せる
という手順で置き換えるのです。これで、Aの顔のパーツは消えてなくなり、目・鼻・口などがすべてBに変身します。ただ、変えられるのは単純に顔の部分だけで、他の部分はAのままになります。
《Bliss》に出演しているオーウェンが偽物だと仮定しましょう(というより、まず間違いないと確信しています)。
最初からディープフェイクにするつもりなら、姿形が比較的オーウェンに似ている人物を使うでしょうから、パッと見た目にはバレにくくなりますね。しかしそこまでクリアしたとしても、しょせんは偽物。動きや演技は再現できません。実際、《Bliss》のオーウェンは顔がコロコロ変わっています。
↓こちらが予告編。
髭の色・顔のラインが次々と変わります。これはおかしいですよね!
もう一度、先に挙げたレビューを読み返してください。ここに書いたのはほんの一部ですが、他の意見を見ても、文中に「混乱」、「嘘」、「不自然」という言葉が溢れています。レビュアーは皆、無意識のうちにこの映画に嘘を感じたのではないでしょうか。一般人のこうした印象は、この映画がディープフェイクであることの有力な裏づけの1つです。
声もディープフェイクが可能ですから、音声が不自然と感じる方がいらっしゃるのもうなずけますね。
3.インターネットだけの配信は不正の温床
※イメージ画像
この映画に不審感を持つ理由は他にも3つあります。2021年1月初め頃まで、この映画についてほとんどニュースになったことがない点、内容が全く異なるにも関わらず、⑧のホラーと同時期に制作している点、Amazon独占配信である点です。
ほとんどニュースになったことがない事については、面白い結果をお話ししましょう。Wikipediaには、《Bliss》(2021)制作開始のニュースページ(英語)へのリンクがあり、そのページへ飛ぶと、ニュースの公開日時が19年7月3日になっていました。ここまでは何ということもありません。不思議なのは、
19年7月3日に書かれたはずのニュースが、21年1月最初の時点でどこにも存在しなかった!!
ことです。これは間違いありません。私は今年の初めに《Bliss》(2021)に疑いを持ち、さんざん調べたのですから、存在していれば検索に引っかかったはずです。
もし、このニュース公開日時が真実なのであれば、このサイトはよっぽど隠れていたんでしょうね。
ただ、Wikipediaの過去ログを信用するなら、《Bliss》(2021)のページは既に2019年10月2日に作成されていますから、百歩譲ってこの時点で制作予定があった事は認めてもいいかもしれません。Wiki内の解説には、19年6月には撮影に入っていた、と書かれています。
でも、もしそうだとすれば、2019年9月27日に公開された⑧のホラー《Bliss》と制作時期が近すぎます。例外もあるかもしれませんが、基本的には、同時期に同じタイトルの映画を制作することはありません。ですから、これだけでも充分に不自然なのです。
それだけではありません。もし19年に制作したのであれば、なぜ今頃に初公開したのでしょう? インターネット配信のみの映画ですから、撮影して配信するまで丸1年以上もかかるのはおかしいのでは? 撮影後にディープフェイクを施したために時間がかかったのでしょうか?
不審理由の最後に挙げたように、そもそもインターネットのみの配信映画は信用できません。この《Bliss》がそうであるように、アマゾン・プライムやネットフリックスにはオリジナル映画というものがあります。しかし、これがまさに不正の温床となりうるのです!
一般的な映画なら、出来上がった作品は世界のあちこちで劇場公開され、DVDなどのパッケージ販売、レンタル用ディスクの配布があり、その上で複数のインターネット配信サービスへの提供がなされます。これだけの規模で制作すれば、仮に作品のどこかに不自然な点があればすぐにバレてしまいますし、不正などがあれば大きな責任を問われます。
しかし、オリジナル映画ということは撮影・編集・公開すべてが、その配信サービス会社の下で行われ、他所には一切関わりを持ちません。独占配信すれば、視聴できるのはその配信サービスの会員だけ。となれば、必然的に不正やごまかしもしやすくなるのです。
Photo by Themoviedb
なぜ、これほどまでに《Bliss》が偽映画だと主張するのか? それは、⬇️こちらの2記事をご覧ください。
オーウェンは19年11月頃から国際的陰謀に巻き込まれて、ある場所に行き、それから今現在に至るまでその場所を動けない状況にあるのです。
この映画の撮影開始は19年の6月とされていますから、もしかしたら一部は本当にオーウェンも出演したのかもしれません。でも、分かっている事情をいろいろ考え合わせると・・・
疑わしい・・・。